驚きと原点回帰のコースは進む

 フィルムで包んで蒸し上げたマナガツオ。そもそもイタリア料理の修業を長く積んだ井上シェフのエッセンス。柚子の香りがふわりと広がり、マナガツオの旨みのすべてが凝縮。

 古代に近い、赤米の酒粕に漬けた鴨肉もまた、炎で調理。竹の皮に盛り、こちらもまた原始的な感覚に陥る。

コースのメインは京都の酒米

 この日の料理のハイライトは、お米料理。京都が誇る酒米「祝い米」を使い、小さな粒はカニの旨みをしっかりと纏っている。イタリアンで長く修業を積んだ井上シェフならではの、「祝い」の料理。

 デザートは燻製にしたチーズケーキと、焼きいも。徹底して自然の中で、炎を味方につけた料理ばかりだ。

 3時間に及ぶランチが終わると、太陽は少し傾き、夕方の気配。自然の真ん中に身を置いたランチは太古の食事に目を向ける機会になり、いつもよりも日暮れが一日の終わりのように感じられる。

 2021年のオープン以来、自然の細かな移ろいを観察し、料理で表現し続けてきた井上シェフの集大成イベントは、最先端でありながら最古。また季節を替えて体験したい、深い深いものだった。シリーズとして今後も継続する予定。次回のシェフズ・テーブルランチではどんな趣向を見せてくれるのだろう?

シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue

所在地 京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔
電話番号 075-746-5522(ザ・リッツカールトン京都 レストラン予約直通)
https://chefstable.ritzcarltonkyoto.com/

2023.12.22(金)
文=CREA編集部