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 NHK「あさイチ」出演に出演するなど、人気の産婦人科医・高尾美穂さんは、更年期外来を訪れる母親から、思春期の娘の心身や性教育について相談を受けることが多くあるといいます。そして、女性の人生に大きな変化が訪れ、心身ともに不安定な時期であっても、母と娘が大切なことを語り合えるようになればという願いから生まれたのが 『娘と話す、からだ・こころ・性のこと』です。

 女性の人生の「からだとこころ」について綴った同書から、一部を抜粋して紹介します。

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生理をコントロールするピルの使い方

 例えば、仕事で大事なプレゼンがあるとか、絶対に成功させたいイベントがあるなど、ここぞというときに生理の一番重い日が重なりそう、という心配ごとは、年齢を問わず、多くの女性に共通する悩みだと思います。

 中学生・高校生の女子生徒のみなさんの場合で言うと、例えば、スポーツ系の部活動に打ち込んでいる方の中には、大事な試合の日に生理が重なってしまって、思うようなパフォーマンスができなかったという経験がある方も多いのではないでしょうか。もちろん、スポーツに限らず、林間学校や遠足など学校生活で困ったことがあるという方もいると思います。

 私は婦人科のスポーツドクターとして、女性アスリートやジュニアアスリートのサポートをしていますが、やはり生理にまつわる悩みを持っている選手は少なくなく、こんな相談を受けることがよくあります。

Q.アスリートとして「ここ一番」というときにベストコンディションでのぞみたいのですが……

 アスリートを対象に、月経周期のなかでどのタイミングで体調が悪いかというアンケートをとってみると、二つの時期に回答が集中します。それは、「生理中」と「生理前」です。

 一方、調子がいいときはいつですかと聞くと、7割の方が「生理が終わった直後」と答える一方で「生理中に調子がいいと感じる」という方がいらっしゃるのも事実で、さらに、「月経周期による変化はあまり感じない」という方も1割弱いました。

 何を言いたいかというと、自分は月経周期のどのタイミングに調子が悪いと感じるのか、まずは観察してみてほしいのです。生理中なのか生理前なのか、両方なのか。

 そして、調子が悪いことに対して何ができるだろうか、と対策法を考えてみるのが次のステップになります。

 生理の重い日が一番つらいから、大事な試合やイベントと重なってほしくない、と考えたとします。

 「生理が重い」の中身を見てみると、大きく二つに分けることができます。一つは、月経困難症――おなかが痛い、腰が痛い、気持ち悪くなる、こころの状態が落ち込むなど――によるもの。もう一つは、出血するという、物理的に困る状態ですね。

2023.10.12(木)
文=高尾美穂
構成=長瀬千雅
撮影=東川哲也(朝日新聞出版写真映像部)