生理前に腹部がズキズキ痛んだり、場合によっては腰痛や頭痛に悩んでいる女性は、きっと少なくないはず。
「CREA保健室」第3回のテーマは、「生理痛」。自分でできる生理痛対策や、薬に頼るべきか否かなど、婦人科専門医の福山千代子先生に教えて頂きました。
生理痛の原因は「子宮の収縮」と「痛みの物質」
月に一度、生理とともに訪れる生理痛。いったいこの痛みの原因とは何だろう?
「生理とは、子宮の内側を覆っている子宮内膜が剥がれ、月に一度、膣を通して体外に排出される現象です。生理前や生理初期に感じる痛みは、子宮内膜を押し出そうと子宮が収縮することで発生します」
子宮を収縮させるために、子宮内膜で「プロスタグランジン」という生理活性物質が産生される。このプロスタグランジンは、痛みや炎症の原因となる物質でもあり、末梢神経に結合すると「痛みの信号」として脳に伝わってしまう。
「お腹だけでなく、頭痛や腰痛を感じる人がいるのは、プロスタグランジンの影響です。また、生理前は物理的に子宮自体が肥大するため、お腹や腰まわりに“重だるさ”を感じる人もいます」
生理痛がひどい場合、背後に「冷え」や「病気」が潜むことも
生理痛には個人差がある。ほとんど痛みを感じることなく、生活に影響がない人もいれば、なかには寝込んでしまうほどひどい人も。
「まず“冷え”が気になる方は、生理痛を感じやすい傾向にあります。冷えて骨盤周囲の血流が悪くなると子宮の筋肉が収縮し、痛みが生じやすくなるためですね。また、初潮を迎えたばかりで子宮が未成熟で子宮口が狭い場合も、収縮に力を必要として痛みを感じやすくなります」
初潮の頃から生理痛がひどく、20代以降の成熟期入っても強い痛みが継続する場合は、少々注意が必要だ。将来子宮内膜症になるリスクがあるという。
子宮内膜症とは、本来子宮の内側を覆うはずの内膜が、卵巣や腹膜等に発生する病気のこと。子宮内膜は本来月に一度、経血として膣から排出されるけど、そのような出口がないため、それぞれの臓器に溜まって卵巣が腫れたり、まわりの組織と癒着を起こし、強い痛みを引き起こすことがある。
「このように強い痛みが続く場合、病気が隠れている可能性もありますから、一度婦人科を受診して頂けたらと思います。ご本人が痛いと感じていて、日常生活に影響しているなら、それは“改善したほうがよい痛み”です。我慢をせずに、ぜひ専門医に相談を」
「温める」「軽いストレッチ」など、自分でできる生理痛対策
生理痛を軽減するために、自分でできることの1つが「温めること」だ。カイロをお腹や腰まわりに貼るだけで、血流が促され子宮の筋肉をゆるめる働きがある。
「入浴でも同じ効果があり、子宮の収縮で生じる痛みを緩和してくれます。20~30年前は、生理中に入浴を避けるようにいわれた時代もありましたが、お風呂で血流を促すことは生理痛の緩和に有効です」
また、骨盤周囲の血流を促すために、軽い運動もおすすめであるという。腰回りやそけい部を軽くストレッチすることで、筋肉がゆるみ、血流を促す働きが期待できる。反対に避けるべきは「冷えを助長するようなファッションや生活習慣」だ。
「スキニーパンツやガードルなど、締めつけがきついファッションは、血流を停滞させる要因です。デスクワークで長時間同じ姿勢を取り続けるのも、血流が滞る原因の1つ。仕事の合間に、適度に立って動くなどの工夫を取り入れましょう」
それでも痛みが気になる場合は、「痛み止め」に頼るのも1つの選択肢であるという。
2022.04.21(木)
文=宇野ナミコ