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ピルの副作用とリスク

 出血に対しては、生理用品のチョイスによって対策ができる程度であればそれでいいということになりますが、月経困難症が重なると、生理用品だけでは対応できません。となると、今は生理期間を変更させる目的でピルが使える時代ですから、大事なイベントの当日に生理が当たるとわかっているのに、わざわざそのままにしておくのはもったいないよね、生理の時期をずらしましょうか、となるわけです。

 アスリートの場合、最初にパフォーマンスに関する悩みを相談する相手は指導者であることが多いと思われますが、女性ホルモンと運動能力や心身の不調の関連について十分に理解している指導者ばかりとはいえず、まだまだ婦人科医をはじめとした専門家からの情報発信が必要な分野だと感じています。ジュニアの場合は特に、相談できる大人が近くにいることが大切であり、保護者のみなさんにも基本的な知識を持っておいていただけるとありがたいです。

 また、アスリートの例でお話ししましたが、「パフォーマンス」には、ほかにもいろんな場面が含まれます。

 現代の女性たちは、仕事はもちろん、さまざまなかたちで社会に参画していて、責任ある立場に就いている女性も増えてきています。生理の時期をずらすまでいかずとも、生理痛を緩和したり、経血の量を減らしたり、月経周期をコントロールしたりというふうに、自分の生理を自分の都合にあわせて調整するという前向きな姿勢でピルをうまく使うことも大事なスキルだと思っています。

 ピルは、女性の生活にメリットをもたらす一方で、デメリットもあります。

 デメリットの第一は、副作用のリスクです。ピルは、からだの中に外から女性ホルモンをとりいれて、脳に「すでにエストロゲンとプロゲステロンがありますよ」と錯覚させることによって、排卵を起こさないようにするお薬です。服用したらすぐに効果があらわれるものではありますが、からだが慣れるまでに2カ月から3カ月かかることが多いです。そのあいだに、不正出血や吐き気、むくみ、倦怠感、気分が落ち込む、肌が荒れるといったマイナートラブルが生じる場合があります。もっとも多いのは不正出血で、服用した人の2割前後が経験するとされています。これらの症状は、からだがピルに慣れていけば気にならなくなっていく可能性が高いとされています。

2023.10.12(木)
文=高尾美穂
構成=長瀬千雅
撮影=東川哲也(朝日新聞出版写真映像部)