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 NHK「あさイチ」出演に出演するなど、人気の産婦人科医・高尾美穂さんは、更年期外来を訪れる母親から、思春期の娘の心身や性教育について相談を受けることが多くあるといいます。そして、女性の人生に大きな変化が訪れ、心身ともに不安定な時期であっても、母と娘が大切なことを語り合えるようになればという願いから生まれたのが 『娘と話す、からだ・こころ・性のこと』です。

 女性の人生の「からだとこころ」について綴った同書から、一部を抜粋して紹介します。

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親の庇護から離れて歩き出す子ども

 子どもが成長するということは、親の庇護から離れて、少しずつ遠くへと歩き出していくことでもあります。学年が上がるにつれて、親が見ていない時間はどんどん増えていきますし、すべての交友関係を把握することはむずかしくなっていきます。

 そういう状況のなかで、親としては、ふるまいに変化がないか眺めたり、「最近どう?」「何か困っていることない?」と聞いてみたりすることしか、子どものこころをのぞく方法は、おそらくありません。親から見て、近ごろ様子がおかしいなとか、いじめられているのではないかと心配したとしても、本人が問題を自覚して解決したいと望んでいなければ、ものごとは動かないわけです。

 だからといって、働きかけるのが無駄だということではなく、「今日どうだった?」と聞くことは、本人に一日を振り返ってみることをうながすでしょうし、「私はいつでもあなたのことを気にかけている」ことを伝えるメッセージにもなります。

 この積み重ねが、いざというときに「こんな問題を抱えていて、解決したいから助けて」と子どもが言い出せる関係性をつくるはずです。

 それ以外に親にできることがあるとしたら、子どもの世界に介入していくことではなく、大人同士の良い関係性を築いておくことかもしれません。例えば、同じクラスの親同士が密なコミュニケーションを持てていることで、子どもがいじめた・いじめられたという問題が起こったときに、感情的になることを避け、具体的な解決策を話し合う環境を整えることにつながります。

 「子どもたちがどのような関係性であったとしても、親同士は良いコミュニケーションを持っていましょうね」という空気をつくっておくことが、子ども同士のトラブルを解決する助けになるはずです。

 学校の先生との関係もそうですね。何か問題が起きたときに、学校と家庭で連携して対応できる状況にしておくことは、子どもの大きなメリットになることでしょう。

2023.10.12(木)
文=高尾美穂
構成=長瀬千雅
撮影=東川哲也(朝日新聞出版写真映像部)