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「もっとかわいく生んでほしかった」と言われたら

 娘さんが中学生ぐらいになると、「ピアス問題」が発生するご家庭があるのではないかと思います。ピアスをしたいと言われたとき、認めるべきか、反対するべきか。親に黙ってピアスホールを開けてきたときに、強く叱るべきかどうか。

 「こういうとき、親としてはどういう態度をとるべきか」と悩みますよね。「ピアス問題」について、私の考え方を少しお話ししてみたいと思います。

 まず、中学生でピアスをすることは、医療的にはなんら問題はありません。本人としては、おしゃれをしたいとか、憧れの人に近づきたいというイメージがあって、ピアスをしたいと言っているわけなので、校則に問題なければ禁止する理由って特にないよね、というのが私の考え方です。

 ピアスを良くないものとする理由として、「親からもらったからだに傷をつけるなんて」という考え方が聞かれますが、この世に生まれた瞬間から死ぬまでずっと無傷でいるなんてことは考えられないわけですから、転んだケガで傷がつくのとピアスで傷つけるのは別だというのも、子どもからしたら説得力に欠けると思うんですね。

 「大人になったらいいよ」などと条件を付けるのも、子どもを独立した人格として扱うならば、あまり望ましい回答ではないように思います。

 ピアス以外にも、メイクや髪型など、思春期の娘さんが自分の外見に対して「こうしたい」「こうでありたい」という気持ちを持つこと自体は、ごく自然なことです。

 その気持ちに対して、からだに傷をつけないでほしい、できるだけ自然にすごしてほしいという気持ちはわからなくはないのですが、もしかすると親のエゴかもしれない、とも思うわけです。外見を気にするようになった娘さんが思わず、「もっとかわいく生んでほしかった」「お父さんに/お母さんに似なければよかった」などとつぶやいてしまうのも、よくあること。

 親としては、そんなことを言われてもどう返事をすればいいか、言葉に詰まってしまいます。親からすれば、娘にそんなことを言われたら悲しいでしょうし、ドキッとして、申し訳ない、ごめんねと思う親御さんもいるかもしれません。

 ですが、小さいときから「あなたはそのままでかわいいよ」「お母さんにとってはあなたが一番だよ」と伝え続けてきたのであれば、娘さんは親の思いをきっと十分に受け取っていることでしょう。

2023.10.12(木)
文=高尾美穂
構成=長瀬千雅
撮影=東川哲也(朝日新聞出版写真映像部)