今やりたいインプットは……

――声優さんは現場ごとに瞬発力で役を作っていくのが特長ですが、そうなると日頃からのインプットが重要なのではと感じます。

 インプットは超重要だと思いますね。それは別にお芝居を見ることに限らなくていいと思います。僕らはその役が何を感じているかを考えるのが大事な仕事。芝居はコミュニケーションだと言いましたが、人と言葉を交わす必要はない。それよりも「こういう状況になると人はこういう反応をする」みたいな経験や知識をたくさん持っておけば、アイデアがひらめきやすくなると思うんです。

 体が大きいから声が低いはずとか、クールだからあまり音を遊ばせずにしゃべる、みたいなカテゴライズして決めつけてしまうのは、僕はあまり好きじゃなくて。それよりも人間らしさを表現したいので、そのために日頃から色んな人とコミュニケーションを取っていたいんです。色んな経験が自分の価値観を広げて、役の気持ちを解釈する手助けになれば、よりリアリティのある言葉が生まれるかもしれない。もちろん声優には技術も必要です。でもそれは、あくまでも演技を補完するものでしかない。技術よりも、真に迫る言葉が大事なんです。歳を重ねていくと技術は必要とされますが、優先順位を間違えないようにしたいです。

――技術と人間味の両方がある演技を目指しているんですね。

 演技において人間味は必要だと僕は思います。例えばリアルとリアリティは別物だという話があります。演じるときに必ずしもリアルでなくてはいけないわけではない。僕たちは人斬りを演じていますが、もちろんそんな経験はありません。そこがリアルであることはとても難しいことだと思います。それよりも、この時代にこういう人たちがいたという設定に説得力をもたせようとするときに、そのキャラクターの何処に人間としての感性が感じられるようにするのかということを考えるべきだと思うんです。そのほうが伝わるんじゃないかって。僕はそういうやり方をしています。

 僕たちは侍ではないけれど、蒼紫が刀を持つ意味や、人を斬ったときに何を感じるのか。何のために戦っているのかなどを分析していけば、目的のためなら躊躇なく斬れる理由もわかる。大切なもののためならできるんだろうなって。でも、そうせざるをえなかったのかもしれないとも考えたり、台本を読んでたくさんの可能性を考えて持っていくんです。それが声優の仕事なんだと思いますね。

――人間味を知るために、今の内田さんがやりたいインプットは何ですか?

 旅に出たいですね。車で日本一周したい! ただありがたいことに、「るろうに剣心」のお仕事があるということはアフレコがあるということなので、しばらく行けそうもないですが(笑)。普段から、自分の車で行って自分の目で何かを見るっていうのが好きなので、少しでも時間があれば車で出かけますね。運転すると頭がスッキリするし、新しい発見もあるので。普段の生活の中で気分転換をすることが僕にとっては大切なインプットです。

内田雄馬(うちだ・ゆうま)

9月21日生まれ、東京都出身。2012年、声優デビュー。「マクロスΔ」(ハヤテ・インメルマン)、「BANANA FISH」(アッシュ・リンクス)、「呪術廻戦」(伏黒恵)など数多くの代表作を持つ。2018年、「NEW WORLD」でアーティストデビュー。2019年、第13回声優アワードにて主演男優賞を受賞した。「ダイヤのA」(奥村光舟)、「BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-」(カワキ)、「フルーツバスケット」(草摩夾)、「KING OF PRISM」(涼野ユウ)、「ギヴン」(上ノ山立夏)、「宝石商リチャード氏の謎鑑定」(中田正義)、「スケートリーディング☆スターズ」(前島絢晴)、「ブルーロック」(御影玲王)など出演作多数。

TVアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』

毎週木曜24時55分~ フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送中
※放送時間は予告なく変更になる場合があります。

毎週金曜正午からPrime Videoにて先行配信
毎週月曜正午から他配信サービスにて順次配信中
※配信日時は変更になる場合がございます。

幕末の動乱期、“人斬り抜刀斎”と恐れられた志士がいた。
その男は、新しい時代の到来と共に人々の前から姿を消し去り、「最強」という名の伝説と化していった。
時は流れ――明治十一年、東京下町。
逆刃刀を腰に下げ、不殺を誓う旅の剣客・緋村剣心は、神谷活心流の師範代・神谷薫と出会う。
剣心は、活心流を騙る辻斬り「人斬り抜刀斎」の事件を解決したことをきっかけに、薫のもとに居候することとなる。
東京府士族出身の明神弥彦、喧嘩屋を称する相楽左之助といった仲間たちとの出会い
過去の因縁によって戦うこととなる宿敵たちとの対峙。
新しい時代を懸命に生きる人々による明治剣客浪漫譚、ここに開幕――!
https://rurouni-kenshin.com/

2023.09.28(木)
文=大曲智子
写真=釜谷洋史