めざせ! 和製ジャック・ニコルソン

 この信頼感よ。いっそハゲ散らかしていただいてもOKだ。というのも、今の織田裕二を見ていると、アメリカが誇る怪優、ジャック・ニコルソンを思い出すのである。何をせずともオーバーアクションに見える表情。事件や権力を思わせる眼光。ヤンチャな笑顔。どれだけ隠しても漏れ出る「仕事はできるのに恋愛は不器用」フレイバー……。ジャック・ニコルソンが熟年恋愛でオロオロする姿が最高にキュートな映画「恋愛適齢期」や「恋愛小説家」のリメイクはどうだろう。今回の「シッコウ!!」を観て、いけるぞ! と勝手に期待してしまった。

 もしくは、イヤ~な人の役をぜひやっていただきたい。1993年の三谷幸喜の出世作「振り返れば奴がいる」のえげつない医者、司馬役は素晴らしかった。あのドラマから早30年。悪者に見えて実はいい人という役ではなく、物語の最後まで、狡猾でイヤ~な役をやってほしいのである。悪徳政治家や裏社会のボス、もしくは「シャイニング」のような、狂気の権化みたいなのも観てみたい。有名な、ポスターにあるジャック・ニコルソンの「叩き割ったドアの隙間からニヤリ顔」をぜひ再現してほしい。

 クッ、ついつい「これやってあれやって」と、おねだり状態になってしまった。

 己の圧の強さを自覚し、獅子舞の如くドラマをうねうねと練り歩き、盛り上げるアラカン織田裕二最強!

 とはいえ、決して器用な人には見えず、彼が出てくると「ガツーン!」という音が想像で聞こえてくるような頑固さすら感じる。そんなイメージと噂が重なり、「孤独なレジェンド」でいた時期もかなり長くあったはず。けれど、今「シッコウ!!」で、実力派若手と年上俳優の間に挟まり、周りに助けられる姿は、役柄とはいえ、なんとも楽しそうだ。

 ド真ん中の立ち位置から脇に回るタイミング。そこに立ちはだかる「プライド」という、そりゃもう厄介で高い壁を乗り越えた今の織田裕二が言うからこそ、伊藤沙莉に向ける「友達にならないか」というセリフにグッとくる。

 そして「無事の落着を!」と、その丸い背中を応援したくなるのである。

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田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2023.08.22(火)
文=田中 稲