道尾 最後の大謎も美しく、フェアで、見事でした。一緒に面白いものを作りたい気持ちがいよいよ強まったところに、第一回のミーティングとなった。結果的に最高のタイミングで時が満ちたという感じでしたね。

 加藤 その時に道尾さんが犯罪捜査ゲームについて力説されて。

 道尾 海外では人気のあるゲームで、僕は英語圏のものを片っ端から取り寄せていました。捜査資料や写真や証拠物を実際に手に取って、本当に刑事や探偵になった気分で推理する。夢中になって遊んでいたんですが、一つだけ大きな不満があって。それは、物語がないこと。犯人を名指しして事件は解決するんだけど、取ってつけたような動機だったり、犯人や被害者の背景も描かれていないか、そもそも設定されていない――つまり謎の向こうに何も物語がないものばかりだった。じゃあ、世界で初めての“物語のある犯罪捜査ゲーム”を作りたい、とZoomの終了時間ギリギリまで熱弁して。

 加藤 何が出来るかを探る打ち合わせのはずが、「道尾さん、もうやること決まってるじゃないですか」と(笑)。

「DETECTIVE X」制作開始!

 加藤 「DETECTIVE X」は道尾さんとSCRAPの共同で制作したという形ですが、僕らは「道尾秀介・作」だと思っています。プロデューサーとディレクターの関係が一番近いと思うけど、中身を作ったのは道尾さんで、SCRAPは道尾さんの作った物語を一番良い形、一番プレイヤーの手に届く形で送り出す道筋を整えた感じです。

 道尾 手がかりにする音源も自分で製作しましたし、新聞記事を再現するためにInDesignというレイアウトソフトの使い方まで覚えてしまいました。写真は『いけない』の時と同じでラフスケッチを描き、撮影現場に立ち会ってまたイメージに近づくように微調整を重ねて。

 加藤 道尾さんは、隅から隅まで自分でコントロールする方なんですよね。小説家と一緒にゲームを作ること自体初めてなので、小説家がみんなそうなのか、道尾さんが特殊なのかは分からないんですけど。ゲーム制作は分業制で、僕らの会社でも一人当たり年間四~七本、並行して携わって、「ここまでやったから、後はよろしく」と任せるのが普通なので、筋書きだけでなくシーンごとの絵コンテまで完成した状態で持ってきてくださったのには驚きました。

2023.08.11(金)