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思いっきりかわいい装丁に

――河野さんは高校2年生から小説家を目指して作品を書いていたそうですが、今作のようにエンタメに振り切った小説はありましたか?

河野 あまりそういう意識で小説を書いたことはありませんでした。親友の手がかりを求めて入り込んだ世界で能力者として戦う架見崎シリーズの『さよならの言い方なんて知らない。』(新潮社)も、テーマを決めて物語を作るという流れはありましたし。そう考えると今作は私の中では特殊な書き方をしているかもしれないですね。すべての瞬間で私が楽しいと思える文章を書こうと割り切りました。

――殻を破ったということですか?

河野 うーん、殻を破ったというよりは、今まで視界に入れなかった歩きやすそうな道に入ったら、ちゃんと歩きやすかったという感覚です。これまでは緻密に練った文章を書くのが好きだったけど、力を抜いて書いた時にどういう文章になるかがはっきりとわかりました。その感覚は大事にした方がいいのかな。私は求めた通りに言葉が働くディペンダビリティな文章を意識してるけど、それが今回は最も高いと思いましたね。

次回作はヴァンパイアと数学者の物語

――今作は「かわいい装丁がいいです」と河野さんから編集者に希望されたそうですね。本当にすごくかわいい仕上がりで、書店で思わず手に取ってしまいました。

河野 これまでの単行本はシリアスさも大切にしていたので、派手さは避けていた面があります。でも今回は楽に読んでほしいから、思いっきりかわいい方がいいかなと思ってお願いしました。

――次の作品も、とても楽しみです。

河野 ありがとうございます。7月には、『さよならの言い方なんて知らない。』の最新刊が出る予定です。あとは、KADOKAWAで1冊読み切りのヴァンパイアと数学者の話を予定しています。楽しみにしていてください。

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河野 裕(こうの・ゆたか)

1984年徳島県出身、兵庫県在住。2009年、『サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY』(角川書店)でデビュー。2015年、『いなくなれ、群青』(新潮社)で第8回大学読書人大賞を受賞。2020年、『昨日星を探した言い訳』(KADOKAWA)で第11回山田風太郎賞候補。2022年、『君の名前の横顔』(ポプラ社)で第3回読者による文学賞を受賞。

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2023.08.01(火)
文=ゆきどっぐ
撮影=鈴木七絵