この記事の連載

テーマがないコラムは、これからも続く

――最後に、改めてコラムを振り返って思うことをお聞かせください。

佐藤 読み返すと、連載当初は「ちゃんと書かなきゃ」って思ってる節があって、逆に恥ずかしいなとも思います。学びがあったり、新しい発見があったりする文が、価値があるのは言うまでもない。けれど、AERA.dotにおける俺の存在意義はそれじゃない。中身がないけど、ひと笑いくらいして少しでも元気になっていただけたら。

 コラムについては新井英樹さんのTwitterでの誉め言葉がすばらしくて。『「毎回、字数をいかに埋めるか」に腐心する様を暴露し「テーマの核心」へ迫ろうともせずに書き切る!スタイルが確立されてること笑。それでいて読後こぼれる何かに触れ、ほんわか心温まるように「書きたい芯」が書かれている。まさに「おもらし」です!』と。

 さすがですね、この通りだと思います。テーマの核心に迫ろうとしないどころか、そもそもテーマすらない!

――今後の活動についてもお聞かせください。2021年発売の雑誌『SWITCH Vol.39』では、「やりたい作品が一つあって、凄まじい残虐さと凄まじい愛の作品になる」とおっしゃっていましたが?

佐藤 それはこの本に掲載した脚本『おとなの絵本(仮題)』(137ページ)のことですね。ものすごいびっくりするようなオチがあるんですけど、残念ながら実現は今のところしてなくて……。

 今後、書く欲求を満たすものとして、Twitterやコラムを続けていく予定です。それに、監督作品3作目を実現させるべく動いています。

 時には小説のオファーがあることもあって、将来的にはもしかしたら可能性があるかも。映画の脚本は、書いたとしても、やはり実現までいかないこともあります。お金が集まらないことには当然実現しない。でも小説はそのまま作品になる。面白いと思ったセリフもそのまま読者に届く。そういう部分に興味はあります。

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佐藤二朗(さとう・じろう)

1969年5月7日生まれ。愛知県出身。1996年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げし、全公演で作・出演を担う。様々なジャンルのドラマ、映画に多数出演。原作・脚本・監督を務めた映画作品に『memo』(2008年)、『はるヲうるひと』(2021年)がある。著書に、Twitter投稿に本人のツッコミを掲載した『佐藤二朗なう』(AMG出版)、『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)。8月11日から映画『リボルバー・リリー」が公開予定。

心のおもらし

定価 1,870円(税込)
朝日新聞出版
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2023.07.15(土)
文=ゆきどっぐ
撮影=石川啓次
スタイリスト=鬼塚美代子(アンジュ)
ヘアメイク=今野亜季(A.m Lab)