作品の本質を共有して、監督の想像、要望を超えて、樹木さんが偉大な力で作品に貢献されてきた軌跡を、ほんの少しだけれど知っている。

 私は一度だけ同じ映画に出演したことはあっても、共演シーンは一つとなく、一緒にお芝居をすることは叶わなかった。それでも樹木さんは、私にとってもとても大切な人だ。感謝してもしきれない。

 あまりにも未熟な自分を助けてくれた。本を読むこと、人の人生を知ることが大事だと教えてくれた。何事も面白がって、平気に生きることは可能なのだと教えてくれた。

 自分の誕生日と星座があまり好きではなかったけれど、樹木さんと三日違いで、同じ星座であるというだけでなんだかちょっと嬉しい。

 樹木さんのようにとはいかなくとも、私は私の人生をもって、作品に貢献できる力をもっともっと養っていきたい。その力を、正しく美しく扱えるように。

 そしてまたいつか、以前とは比べ物にならないほど至高の自分で、是枝さんの作品に参加したい。夢は消失した瞬間に、蘇生した。

 追伸

 ファビエンヌの自伝とは違って、この解説(という(てい)の雑感……)に、一つの嘘もないことを断言する。

2023.06.19(月)
文=橋本 愛(女優)