「音楽に没頭して乗り越えてきた日々でした」(小川)
小川貴之(Key/Cho) みんな、いろんな気持ちを持ってハマスタに集まってくださったと思うんですけど、その中でもやっぱり自分自身が音楽で感動したいし、音楽の素晴らしさを体感したいし、そのうえでしっかりみんなに感謝を伝えたいっていうのは、忘れちゃいけないなと思って臨みました。そこに至るまではどうしても、気持ちを前向きにすることができなくて。だから、ハマスタを目指して、ただひたすら音楽に没頭し続けて、乗り越えてきた日々でした。音楽と向き合うことは、必然的に現実と向き合うことにもなって。つらいことももちろんあったんですけど、それが自分の中では前に進むということでした。
――そうだったんですね。
小川 でも、つらくてもそこから目を背けるという選択肢はなかったですね。自分自身も音楽を大切にしてますし、メンバーが大事にしているものが、僕の大事なものでもあって。“sumikaが大事”っていう思いはみんな一緒だし、結局それは変わらないから。だから、僕はsumikaの音楽を、本当に何がなんでも守りたいなと常に思っています。
片岡 きっと、音楽から離れたほうがもっとつらいと思うんですよね。それは、悲しいところでストーリーが止まってしまうから。毎回そこから“再生”しなきゃいけなくなってしまうのは、悲しいことだと思うんです。動き出して続きを作ることができるというのが、僕らに残された希望で。だから、メンバーや一緒に歩んでいく人と、続きを作っていけばいい。これから楽しい曲をたくさん作っていけば、sumikaの音楽を楽しく聴ける日が来るし、ちゃんと未来があるって僕は信じています。だから、僕らには音楽が必要なんです。
荒井 僕は、逆に言ったら、音楽に近付かないでいたら一生そのまんま、1人で部屋の中でぼけっとしてるだけになるなと思ったので。痛みや悲しみが伴ったとしても、前に進んで早く音楽の中に身を置いて、自分のいろんな気持ちを実感したいなと思っていました。それで歩き出した結果、そこにはもちろん痛みも悲しみもあったけれど、喜びも楽しさも同じようにあったんですよね。だから、sumikaを続けたいと思いました。
――当日はあいにくの雨でしたが、ハマスタには約3万3,000人もの観客が集まりました。
片岡 雨も含めて、すごい1日だったなあと思います。朝は正直、「雨かあ」って、ネガティブな気持ちにもなりましたけど、結果的にあの日雨だったっていうのも、必然なんじゃないかなと思っていて。「雨天決行」で始まって「雨天決行 全楽章」で終わるというセットリストでしたが、それを雨の中で歌うっていうのは、一番リアリティがあるし、あの場にいた3万3,000人と、そしてステージにいるメンバーとゲストメンバーとスタッフチームと、全員で分かち合えたことは、本当に感謝しかないですね。
2023.06.17(土)
文=石橋果奈
撮影=深野未季
スタイリスト=加藤“runpe”将(IN THE FLIGHT inc.)
ヘアメイク=URI