5月14日に横浜スタジアムで行われた、sumikaの10周年記念ライブ『Ten to Ten to 10』。終始雨が降りしきる中、33曲を4時間かけて3万3,000人の前でパフォーマンスした。

 ギター/コーラスの黒田隼之介さんが2月23日に急逝してからわずか2か月半。3人でのステージをやり遂げた片岡健太さん、荒井智之さん、小川貴之さんに、長く濃密な1日を振り返ってもらった。また、図らずともsumikaとしての11年目と3人での再始動のタイミングと重なった新曲「Starting Over」についても話を伺った。


メンバーと話し合った「アクションを起こしたい」

――横浜スタジアムでの結成10周年ライブを開催するに至るまで、さまざまな思いがあったと思います。メンバー間で話したことや、それぞれが感じたことをお聞きできますか。

片岡健太(Vo/Gt) 彼がいないということは、もう事実で。じゃあそれをどうやって受け止めていこうって考えたときに、活動を続けていくことでしかそれを実感できないだろうなと。バンドってメンバーだけじゃなくて、スタッフチームもいるし、聴いてくださる方もいる。そういう方にとって、“sumikaが作ってきた音楽”が、悲しい記憶として終わってしまうことだけは避けたいなと思いました。だから、続けていくしかないし、続けていったのちに……1年後かもしれないし、10年後かもしれないんだけど、「やっぱりsumikaはいい音楽を作ってたんだな」ってシンプルに思い返してもらえるようなアクションを起こしたいなと。そういうことをメンバーと話しましたね。3月のツアーはできなかったんですけど、最短で準備をして、4月の終わりの“春フェス”でライブを再開して、5月14日のハマスタも予定通りやろうということになりました。

荒井智之(Dr/Cho) 最初は信じられない気持ちがありました。ただ、そういう時間を過ごしていく中で、自分たちが何をなくして、どういう感情なのかがわからないなと思ったので、やっぱり動き出したいなって。バンド活動を通してでしかわからないことが、たくさんあるんじゃないかなと。だから、横浜スタジアムでのライブを目標に動いて、そこで自分が何を感じるのかを知りたいなと思ったんです。音楽をこのままやりたいのか、バンドを続けたいのか……そういう答えも、やっていくことでしか出ないんだろうなと。

2023.06.17(土)
文=石橋果奈
撮影=深野未季
スタイリスト=加藤“runpe”将(IN THE FLIGHT inc.)
ヘアメイク=URI