首里城にも用いられるサザナミサンゴで造られた石塀

 そのひとつが、国の重要文化財に指定されている高良家住宅。19世紀後半に築かれたお屋敷は、慶留間島の集落の中央にひっそりとたたずんでいます。

 台風対策のために軒高まであるという、背の高い石塀の間の小道を進むと、屋敷の前で突如、視界が開けます。そこには沖縄の伝統的な民家に見られる、ひんぷん(目隠し塀)が。その奥に戸を開け放した屋敷が立っています。

 管理している島民の方が高良家住宅の説明をしてくれました。

 まず緻密にサンゴを積んだ石塀は、この地方で「ちぶる石」と呼ばれる、サザナミサンゴの塊を削り、パズルのように噛み合わせた「相方積み」。これは首里城の一部でしか見られない特殊な技術だとか。石塀のほとんどが平成11(1999)年の保存修復時に積んだものですが、一部建築された当時のものも残っています。

 そして屋敷の後方に回ると、「ウヮー(豚)フル(便所)」という家畜小屋が配置されています。その一角にはかつての家主が海から拾ってきたB29の燃料タンクを改造した小舟も置かれていました。沖縄がくぐり抜けてきた歴史の一端を垣間見るようです。

 さて次に慶留間島から全長240メートルの慶留間橋を渡って外地島へ。阿嘉島からは2キロ南東へ下ったことになります。

2023.04.08(土)
文・撮影=古関千恵子