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「自分では都会的で洗練されてると思ってる?」

ーー泥臭い面は、吾郎さんも徐々に出せるようになっているのでは?

稲垣 映画『半世界』の時に、「稲垣くんは全然泥臭さ、土臭さがあるよ」って阪本順治監督に言われたのが印象的だったんです。「自分では都会的で洗練されてると思ってる?」って、ちょっと冗談で言われたんですが、実際、僕は自分で自分のイメージを勝手に作ってるようなところがある。「稲垣吾郎のパブリックイメージ」とかよく自分で言ってしまうけど、本当はそういうのはないんですよね。だから腑に落ちましたよ。

ーー代々死刑執行人の家に生まれたサンソンは、どこか泥臭い部分もあると同時に、先ほど吾郎さんが仰ったように『ベルサイユのばら』のオスカルのような部分もありますよね。

稲垣 そうなんです。オスカルは近衛連隊長として、アンドレと一緒に王に忠実に仕えていました。僕は『べルばら』も好きなんですよ。『サンソン』と同じフランス革命の時代の話ですし。

ーーどちらも血生臭い話なのに、華やかさがあるんですよね。サンソンはギロチンの発明にも関わっているし、毎日何人も処刑していて、死がまさに面前にあるというのに。

稲垣 そう。なぜか死を感じさせない、サンソンの不気味さというのはありますね。プレイボーイで女遊びをしていたり、うまく世を渡っていくような軽妙さや、ちょっと得体のしれない感じがあって面白い人物像なんですよ。

ーー実はこの間、香取慎吾さんに取材したとき(『週刊文春WOMAN2023春号』)、人生の残り時間や、死生観の話をしたんです。

稲垣 なるほど、深い話ですね。

ーーサンソンは人の人生を断ち斬ってしまいますが、吾郎さん自身も死や人生の残り時間というのは意識しますか?

稲垣 なるべくなら、そこから目を逸らしていたいという部分はありました。やっぱり、夏休みの宿題とかと一緒で。今は人生100年時代って言われてるけど、今の自分の年齢を考えると、少しは考えますよね。香取さんがどう思ってるのか、すごく興味あります。僕が今の彼と同じ年齢の頃は、人生の残り時間は考えていなかった。

2023.04.07(金)
文=石津文子
撮影=杉山秀樹
スタイリング=黒澤彰乃
ヘアメイク=金田順子