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 香取慎吾が『凪待ち』以来、3年ぶりに主演した映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』が公開。

 主演の香取慎吾と市井昌秀監督、二人の意外な本音が飛び出す、赤裸々トークをたっぷりお届けしよう。

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「慎吾さんがこれを言ったら、っていう発想で書いています」

――先ほど香取さんから、草彅剛さんと裕次郎は共通するところがある、という話がありましたが、監督は草彅さんにこの役を、とは考えなかったんですか? 草彅さんは監督の『台風家族』(19)でダメな男を演じていましたね。

市井 全然、想像もしてなかったですねえ。書いている時に、慎吾さんがこれを言ったら、っていう発想で完全に書いているから。ただ、僕は「ほぼ当て書きです」って言っているんですが、「ほぼ」という余地を残しているのは、これだけ愛情溢れる香取さんにそのカッコ悪さというものが合っているのかは、本番当日までわからないので。だからビジュアルを想像しての当て書きではなく、香取さんがこれを言ったら面白いなと思って書きました。

香取 作品を通して好きな部分としては、家の中で気まずい空気があっても、次の日になったら裕次郎は職場でいつも通りなんですよね。もっとドラマや映画だとちょっと引きずる描き方もあると思うんだけど、全く引きずってないですね。前の晩に嫌なことがあったから翌朝いつも以上に明るくするでもなく、すごく平坦に「おはようございます」って感じで来るところは好きでした。

市井 カッコ悪さって、さっき慎吾さんも言っていたように、ちょっとした仕草や表情に生まれるものなんですよね。だから、演出としてそのディテールをチクチク指示すると言うのは良くないことだと僕は思っているんです。だから、香取さんから出てきてしまうことを楽しんでいたと言うか。

――いい男が演じているから嫌いにはならないですが(笑)。裕次郎は妻から旦那デスノートを書かれて当然なほどひどいんでしょうか?

香取 僕はちょっと、当然だろうと思っちゃう(笑)。なんか愛がないし。なんていうんだろうなあ。ホームセンターの副店長としても、誰も慕ってないんですよ。すごく良い先輩っぽくしているのに、誰も慕ってない感じが、僕は作品としてはすごく好きなんですけど。

市井 でも、慕われてないかもだけど、憎めない人にはなってますよね。

――井之脇海さんが演じる後輩には慕われてましたよね?

香取 うーん、慕われてるのかなあ? (悩む)。「こういうところでは副店長って呼べよ」って言ったり、するし。

市井 小さいな、とは思われているでしょうね(笑)。

香取 そうそう。あれって、僕も経験がある感じで。ちょっと、なあなあになってきちゃう感じってある。同じ職場でも、それによって関係が崩れていくみたいな節を感じる(笑)。

2022.09.27(火)
文=石津文子
撮影=佐藤 亘