「これでいいのかな？ どうかな？ というやり取りを積み重ねて」
――この映画は夫婦の話ではありますが、人と人が一緒に長くいるとなぜ気遣いがなくなってしまうんでしょう？
香取 僕はそうならない方なので(笑)。
――じゃあ、ならないためにはどうしたらいいんでしょう？
香取 声にしますよね、なんでも僕は。全てを言う。僕は仕事でも、結構打ち合わせをする方なんですよね。バラエティとか、ぶらぶら街歩きするだけの番組でも、週に2回ぐらい打ち合わせをしていたし、各番組でとんでもないくらいの時間を打ち合わせしていた。そういう時に何をしているのかといえば「僕はこうしたいと思うけど、どう思う？」とか、「これでいいのかな？どうかな？」という、みんなとのやり取りをグァーッと積み重ねている。仕事以外の時でも、友達でも恋人でも家族でも、人との関わりの時は全てそうやって生きているから、僕は。でも、その匙加減がしつこくならないようにはしていて。「こう言ったけど、今の俺大丈夫？」って。
――先ほども「大丈夫？」って確認していましたね。
香取 すごく言うかもしれない、それは。
――新しい地図の仲間である草彅さんや稲垣吾郎さんに対しても、コミュニケーションをすごく取るんですか？
香取 そこには、ないですね(笑)。昔からあんまり取らない。なんでですかねえ。
市井 夫婦感、みたいなのがある感じしますね。
香取 本当に嫌な時には、二人は言ってくれるからかもしれない。それ以外は言わない、っていう形ができてるかなあ？ でも、それこそこの映画の2人じゃないけど、僕がそう思っているだけで、本当は彼らにも何か言ってあげたほうがいいかのかもしれない。今、急にそう思う(笑)。他にはみんなそうしているのに、そこだけしてないんだもん。
――本当にダメな時だけしか、お互い言わないんですね。
香取 そう(笑)。
市井 でも、香取さんは率先して言うところが本当にすごいな、って思います。僕も夫婦間とか、家族間とかでどうしてもやらないといけないこと、を率先してやる方なんですけど、ある時、「俺ばっか、やってね？」ってなったりするんですよ(笑)。
香取 ああ(笑)。
市井 どこか僕が人間として小さいんでしょうね。でも、妻は妻で別のことで怒っていて、棘があったりする。圧倒的にどちらかが悪い時もあるんですけど、二人で喧嘩したらお互い謝ろう、というルールにしているし、この映画ほどうちの夫婦は酷くはなってないんですけど。
「最近やっとSNSの整理がついてきた」
――SNS上の「旦那デスノート」に日和は夫への不満を吐き出していますが、裕次郎に気づかれてしまいます。香取さん自身はインスタグラムはじめ多くのSNSや、YouTubeを使って発信していますが、気をつけていることはありますか？
香取 僕は、最近やっとSNSの整理がついてきて、本当にすごく楽しいですね。皆さんもコミニケーション・ツールとしてのSNSは、整理したほうがいいと思う。インスタやTwitterとかいくつかのSNSやっている場合、どれが自分の吐口なのか、それは自分にとってどういうものなのかという整理がつくとすごく楽だし、楽しめる。間違ったツールで不満を吐いたりしていると、こっちのツールだったら良かったのに、とか。そういうツールごとの向き不向きがあると思うんです。最近僕はTwitterのつぶやきが本当につぶやけていて楽しいですね。
――監督は裕次郎に近いタイプなんですか？
市井 間違いなくそうなんです。僕は石川県に住んでいて、今日も駅まで妻に送ってもらったんですが、服を替えた方が良い、ってことでもめて。結果的に、今日着ているのは息子のシャツなんです(笑)。息子は中3で、もう身長は僕を超えているんです。そんな小さいことでも喧嘩をすると、ちょっと愛情が……。だからさっき控室で「ごめんね」って妻に電話したんですが、あの瞬間は気遣いとか愛情が不足していたんだな、って思ったりするわけです。
香取 監督のことなんですよ、この脚本がやっぱり。「いい意味で」※って言葉を監督がマジで言った瞬間があって。覚えてますか？
(※映画の中で、夫婦の食い違いを象徴するセリフとして出てくる)
市井 はい、覚えてます。
香取 演出の中で、岸井ゆきのちゃんと僕に対して、「次のシーンはこうして、こうしたいんです。いい意味で」って言ったんですよ。その瞬間にびっくりして。ゆきのちゃんも僕も、「監督、マジっすか？」みたいになって(笑)。でも監督は気づいてなくて。「え、何が？」「今、『いい意味で』って言いましたよ」って。
市井 実際に妻がそういう僕を嫌いなわけですから、状況としては合ってはいるんですよね。
――「いい意味で」って、監督は無意識で言ってしまうんですか？
市井 そう。僕が結構、言っちゃうから(笑)。僕が「いい意味で」を嫌いなわけでなく、妻が嫌いなので。
香取 そっか、“僕“が嫌いなわけじゃないんだ(笑)。
『犬も食わねどチャーリーは笑う』
2022年9月23日(金・祝)より公開中
TOHOシネマズ 日比谷 ほかにて全国ロードショー
結婚4年目を迎えた田村裕次郎と日和。表向きは仲良し夫婦だが、鈍感夫にイライラする日和は、SNSの「旦那デスノート」に“チャーリー”のペンネームで鬱憤を吐き出していた。ある日、裕次郎は職場での会話から、「旦那デスノート」の存在を知ってしまう。壮大な夫婦喧嘩のゴングが鳴り響く！
出演：香取慎吾、岸井ゆきの、井之脇海、的場浩司、余貴美子ほか
監督・脚本：市井昌秀
配給：キノフィルムズ/木下グループ
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2022.09.27(火)
文＝石津文子
撮影＝佐藤 亘
