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 香取慎吾が『凪待ち』以来、3年ぶりに主演した映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』が公開。

 ホームセンターの店員と客として出会い、結ばれた裕次郎と日和。しかし結婚4年目、夫は幸せな生活を送っているつもりが、妻は鈍感な夫への不満をSNS上の「旦那デスノート」に綴っていたーー。夫婦喧嘩を赤裸々に描いたブラック・コメディであり、ヒューマン・ホラーとも言えるこの映画、市井昌秀監督はダメな男・裕次郎を香取に当てて書いたという。

 いい男、香取はどうやって自分とは正反対のダメ男を演じたのか? どこまで監督の実生活が反映されているのか? そして、チャーリーとは何者なのか? 

 二人の意外な本音が飛び出す、赤裸々トークをたっぷりお届けしよう。

インタビュー【後篇】はこちらから


「現場にフクロウがいるのはちょっと怖かった(笑)」

――タイトルにもなっているチャーリーは、裕次郎と日和(岸井ゆきの)夫婦が飼っているフクロウです。あのアイデアの元は何だったんでしょう?

市井 いくつかあるんですが、僕が最初に作った長編が『隼』という映画で、猛禽類は一度くっついたら離れない、という知識があったんです。もう一つは、僕が昔、営業をしていた頃に、一般のお宅へ「ピンポン」と伺ったら、フクロウを肩に載せて出てきた方がいたんです。それが面白くて。それと、ホームセンターの中のペットショップに、フクロウを売っていてもおかしくないだろうと。そこで売れ残って割引になっていたのを、日和と裕次郎が購入した、という裏設定もあって。そういったことも含めて、フクロウにしようと思ったんです。でもいざ書き始めたら、猛禽類の中でもフクロウはつがいのままではなく離れてしまう、というのがわかったんです。

――香取さんは、現場にフクロウがいるのはいかがでしたか?

香取 僕はちょっと怖かったんです。そんなにすごく怖いわけではないんだけど、あんまり触れたことがないからなあ、と思ってたら、(岸井)ゆきのちゃんが「わー、かわいい!」って触っていて。実は「よく触れるなあ」って思いながらも、大人っぽく「かわいいよねえ」って僕は言ってたんですけど(笑)。普通にクチバシとか触っていて、すごいなあと思っていて。だから実は僕は触ってないんです。芝居の中では触りましたけど、合間ではチャーリーからは離れていたんですよ。

――『LOVE まさお君が行く!』(12)とか、香取さんには割と動物と触れ合っている印象があったんですが、実はそんなに得意ではないんですか?

香取 そうでもないかなあ? 動物というより、鳥がいる生活はしたことがなくて。だって、チャーリー、すぐここにいるんですよ。それはすごく気になってた(笑)。犬とか猫とは戯れたりはあるけど、鳥とはここまでずっと一緒にいたことがなくて。チャーリーは基本、(真後ろを指して)ここにずっといるんですよ。

市井 確かに、第三者が完全に定位置から見ている生活っていうのは、面白いですよね。犬とか猫と違って、フクロウは動かないので、定点観測をしている感じというのがある。

香取 羽ばたいたりはしないんですか?

市井 羽ばたく時もあるんですけど、ちゃんと部屋に慣れないと激突しちゃうらしいです。

香取 じゃあ、24時間、ここ(とまり木)にいるんですか?

市井 はい。基本、本当にいます。

香取 すごい不思議。

――香取さんはフクロウに監視されている感はありましたか?

香取 いや、結構ずっといるから気にならずにお芝居をしてたんです。でも一人の芝居のときに、ふと壁を見上げると、いるんですよ(笑)。「あ、こっち見てる!」みたいな感じで。

2022.09.27(火)
文=石津文子
撮影=佐藤 亘