ゲネプロ舞台挨拶を実況

 稲垣吾郎がベートーヴェンを演じる舞台「No.9 ー不滅の旋律ー」が2020年12月13日に、東京・赤坂のACTシアターで開幕した。

 2015年、2018年に続く再再演で、演出に白井晃、脚本に中島かずき(劇団☆新感線)、音楽監督に三宅純という才人が結集。傑作交響曲「第9番」をものにするまでの波乱に満ちた楽聖の半生を、ピアノの生演奏と合唱と共に描き出す。

 役者・稲垣吾郎の現時点での代表作と言える作品だ。

 公演前日の12日にはゲネプロ(本番同様に行うリハーサル)が行われた。聴力も恋も失い、その偏屈さから家族や周囲を傷つけながらも、頭の中の音楽を響かせることに情熱を傾けるルイスこと天才ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。

 稲垣は周囲を巻き込む嵐のような人物像を、時に狂気をはらむほど激しく、また繊細に表現している。その痩身からは信じられないほどの熱量で舞台上を支配する演技は、さらなる高みを見せていた。

 また、ベートヴェンの耳となり盾となって支える秘書マリアをしなやかに演じる剛力彩芽をはじめ、発明家メルツェルの片桐仁、時代の変化の象徴である警官フリッツの深水元基、幻影として彼を苦しめる父を演じた羽場裕一、恋人役の奥貫薫、詐欺師ヴィクトルの長谷川初範ら、共演陣の演技も魅力を増している。

 ピアノ2台の生演奏に、時に合唱が加わるベートーヴェンの音楽と物語が融合した形式は前回と同じだが、演奏される楽曲にも変更があるなど随所に新たな演出が。特にピアノがグランドピアノとなり、ピアニスト(末永匡、梅田智也)の存在がより際立っている。

 クライマックスとなる「歓喜の歌」はもちろん、「月光」「運命」「皇帝」「ウェリントンの勝利」などベートーヴェンの頭の中の音楽が、彼の生涯を反映したものであるものを感じさせる。

 公開ゲネプロの前には、稲垣吾郎と剛力彩芽が登壇しての記者会見が行われた。その模様を詳しくお伝えしよう。

 年長である吾郎さんが、役柄同様、マリア役の彩芽ちゃんに甘えるような部分もあり、楽しいやり取りを見せつつ、コロナ禍での上演への緊張感を漂わせていた。

2020.12.19(土)
文・写真=石津文子
写真=田中亜紀