250年前からベートーヴェンが時空を超えて
――久々に会ってみての印象は?
剛力「稲垣さん、本当に変わらないですよね。スタイルも」
稲垣「彩芽ちゃんは大人っぽくなった。やっぱり僕らの年の2年間より、彩芽ちゃんの年頃の方がどんどん成長するし、変わっていきますし。お父さんみたいな言い方してますが。お父さんじゃなくて、お兄さんで(笑)」
――剛力さんは独立して初めての舞台です。
剛力「環境は変わりましたけど、私自身がステージでやることは変わらないので。皆さんにお芝居、物語を届けるということに変わりはないので。ただ、責任感はより感じるかな、と」
――差し入れとかも、事務所ではなく自分でするようになった?
剛力「でも前から自分でやってましたよ」
稲垣「何もひとりじゃ出来ないみたいじゃないですか(笑)」
剛力「いまだに出来ないんですけど、少しずつやってます」
――吾郎さんとベートーヴェンの似ているところは? 以前はヒステリックなところと答えていましたが。
稲垣「似ているところ? あんまり似ているところを考えて、我々ってお芝居しないからわからない。どうでしょう? 助けてくださいよ」
剛力「すごく憑依するっていう印象はあるんです。普段の稲垣さんとは全然違う」
稲垣「僕、若干、ヒステリックというかイラチ的というか。カンパニーの皆さんの前では見せないですけど、ひとりでいる時とかちょっと出る。エレベーター待っている時だったり(笑)。でもベートーヴェンはそれをみんなにぶつけますからね。そういうところは全然違うと思う。
自分と真逆な人間だと思うんですけど、だから演じていて楽しいですね。憑依しているとおっしゃっていただきましたが、250年前からベートーヴェンが時空を超えて乗り移ってくれているような。それを感じながら、皆さんと一緒に演じています」
――吾郎さんは髪型にもかなりこだわりが。前回よりも縮れ具合が少ない?
稲垣「本当ですか? 絶対にそう思いますか? いや、全く一緒ですよ(笑)。ウィッグです。結構、地毛と間違われたりするんですけど、すごく綺麗に作ってくださっているので」
剛力「稽古場でも地毛と間違われてました(笑)。何人かウィッグだったんですね? って」
稲垣「それくらいナチュラルに作ってくださっていて。時系列に合わせて、ウィッグも3種類。癖毛具合が、だんだん音楽室の肖像画のベートーヴェンに近付いてきます。僕との共通項と言えば、癖っ毛なのがそれかもしれないですね。天然パーマで。でもこの季節は乾燥してるので大丈夫です」
2020.12.19(土)
文・写真=石津文子
写真=田中亜紀