2019年6月、惜しまれつつも宝塚歌劇団を退団した、元男役スターの美弥るりかさん。好評発売中の『週刊文春WOMAN』創刊1周年記念号では、退団から約半年を経たからこそ明かせる、在団当時の葛藤とそれを経てたどり着いた充実の日々について語り、大きな反響が集まっている。
じつはこの取材、一日がかりで富士山近くの雪山に出かけ、撮影とインタビューを行うという大がかりなものだった。雪山での撮影後、近くの一軒家カフェで体を温めながら行ったインタビュー。
今回は文春オンライン特別バージョンとして、誌面では紹介しきれなかった未収録トークも含めて、一問一答を全文掲載する。
「自分を撮られる」ということ
――雪の中での撮影、終わった今のお気持ちは?
フォトグラファーのMARCOさんとは今まで何度かご一緒させていただいていて、色々なシュチュエーションの撮影を行ってきたところで出てきたのが「雪山で撮りたい」というアイデアでした。MARCOさんは屋外の撮影での光の入れ方がとても美しい方なので、きっと雪山で撮ったら斬新な写真が撮れるだろうなと思っていました。
一方、スタイリストの樋口麻里江さんとヘアメイクの松野仁美さんは初めてご一緒させていただいたのですが、お衣装もメイクも今までと違う新しいスタイルで、自分にとっては挑戦でした。
――どこが新しさだったのですか?
タカラヅカはどうしても「足して足して」のメイクになるので、引き算のメイクは新鮮でしたし、お衣装に布団みたいなものがついていたのも面白いなと思いました。
私は自分でスタイリングするのも好きですが、そういうアイデアは出てこないです。寒かったですけど(笑)、新しい気持ちもたくさん生まれました。
性別を感じさせないことが「自分らしさ」だと思っているので、「女性になった」でも「男役のまま」でもない、「私自身の生き方」が伝わる表現をしていきたい。そんな私の考えをきちんとキャッチしてくださったのが嬉しかったです。
――今回のような撮影は、どういう意識で臨まれるのですか? 普通のポートレイトとまた違うのでしょうか。
役としてのポートは表情や髪型などを役として作れますから入りやすいんです。でも、今回は「美弥るりか」が裸で出るので、そうなると結局自分が「どう撮られたいか」次第。
このシチュエーション、この服、このメイクでどう撮ってほしいかを自分がプロデュースしないといけません。写真が一つのアートとして見えて、私に興味がない方が見ても素敵だなと感じていただけるためにはどう撮られたいかを客観的に考えます。
前もって考えていく部分もありますが、カメラマンさんに表情や姿勢について色々な注文を受けたとき、瞬時に対応できるかどうかも大切ですね。最初のうちは動揺しちゃうんですよね。もっとポーズを変えてみようと言われても「もう何もしようがない……」とか。
2020.03.03(火)
Text=Chiaki Nakamoto
Photographs=MARCO
Styling=Marie Higuchi
Hair & Make-up=Hitomi Matsuno
Prop styling=Ai Ozaki