もし武器になるなら武器にしていこう

――先ほど「10年目ぐらいから変わった」とおっしゃいましたが、客席からもそれは確かに感じていました。

 ちょうど10年目で星組から月組へ組替えしたのも良いきっかけでした。新人公演(入団7年目までのメンバーだけで行う公演)も終わり、これからどうして行くかが勝負の時期、当時の星組はトップスターの柚希礼音さんを筆頭にとても充実した組で、上級生からもたくさん勉強させていただけて、そんな星組にいられることが誇りでした。

 だから、組替えが決まったときは寂しい自分とチャンスだと思う自分が入り混じって、もう何とも言えない気持ちでした。でも、新しい組の人たちは私のことを何も知らないから稽古場でどんなドジをしたって構わない、「どんな自分にもなれる生まれ変われるチャンスだ」と思ったんですよね。

 そのころから、応援してくださる方に「好き」と言っていただけるポイントも変わってきたんです。星組時代は弟役などが多かったのが、月組には上級生として行くわけで「自分もみんなを引っ張っていかないと」という責任感も感じていて背伸びしていたからでしょうか。

 「美弥さんにしか出せない色気がありますね」などと言っていただけるようになって、「弟キャラの私が?」と最初は驚きました。でも、自分にそういう部分があるならそれは受け入れて、一つの個性として伸ばしていこう、もし武器になるなら武器にしていこうと考え始めたんです。

――「今は弟キャラだけどいつかは変わりたい」と思っていたわけではなかったのですね。

 そうではなかったんです。男役としては小柄だったので、宿命として「弟キャラ」をずっとやって行くのだろうと思っていました。ただ、背が高い人は普通に立っているだけでも男役として見栄えがします。

 当時の星組は皆さん背が高く、170センチ以上の方たちばかりが私の周りで踊ってらっしゃって「ヒィ〜〜!」という感じ。そこでとにかくオリジナリティを探し続けてはいました。

――周りの方の声からそれを発見していったというのが面白いですね。

 そうなんです。そんなこと考えたこともなかったので、最初はびっくりして「ええ? 嘘でしょ?」という感じでした。そうすると本当にそういう部分が必要な役をいただくことが増えてきたんです。

 たとえば悪役。やはり悪役って色気がないと全然かっこよくないですよね。『All for One』のアラミスのような色気の塊みたいな役をさせていただくこともありましたし、男役ですが女役もよくさせていただきました。ショーでの女役も多かったし、お芝居でも何回か。

 そうなったときに、男であろうと女であろうと結局は自分の人間性が舞台に出てくるわけだから、変に肩肘張るのではなく「男役」という鎧を脱いで、もっと自由に魂を動かして、何でも柔軟に感じないと、舞台人としての魅力はないなと思い始めたんです。

 在団中に背伸びして「男役」をしてこなかった分、辞めた今も性別から自由でいられるのでしょうね。私のような人がいてもいいかなと思うし、そういう部分を好きになってくださる方がいるのなら、存在価値もあるのかもと思っています。

2020.03.03(火)
Text=Chiaki Nakamoto
Photographs=MARCO
Styling=Marie Higuchi
Hair & Make-up=Hitomi Matsuno
Prop styling=Ai Ozaki