卒業後は夢中の日々

――「男役がしたくて」タカラヅカに入られた美弥さんとしては、ご自身のゴールには到達できた?

 はい。珠城りょうちゃんの下で続けると決めたとき、同時に自分だけの男役像ができたら辞めようとも決めたんです。そして『BADDY』(2018年)の頃、「美弥るりかの色」ができたなと腑に落ちたとき、「もう大丈夫」と思えましたね。

――お気持ち、聞けてよかったです。

 そうですよね。皆さん本当はその辺りのことが聞きたいだろうなと思いつつ、なかなかお話する機会もないですし、そもそもお話していいのかな、と。

 やはり皆さんそれぞれのお気持ちもありますから、うまく言葉にできないなと、いつも思っていました。

――退団公演千秋楽の翌日は、どんな風に過ごされたのでしょう?

 じつは辞めた直後は体も心も少し元気がなくて…先に辞めた同期に「退団した次の日の朝は気持ち良いよ」と聞いていたので、その日をとても楽しみにしていたんです。

 でも実際は疲れて家に帰り、気が立って眠れない。そのまま朝になってしまい、起きたら外が真っ暗でどしゃ降りで。「えっ!?こんなはずでは」と驚いて、そこで気持ちが落ち込んでしまいました。

――やはり17年間続けていたことを辞めて、ドスンときた感じだったのですか?

 「この先どうしよう」という不安と、「辞めた実感をどこでどう感じたらいいんだろう」という混乱とがあったのでしょうね。みんなとは今まで通り普通に連絡を取り合って全然変わらないのに、いったいどうすれば「自分はもうタカラジェンヌではない」ということを感じられるんだろうと思ったのです。

 そんな日々が1週間ぐらい続きましたが、ありがたいことに仕事が次々に決まって、その後はものづくりの面白さに夢中になっていった感じでしたね。

――多くの方は「退団した次の日の朝は気持ち良い」ものなのでしょうか?

 それは人それぞれなんでしょうね。私の場合、最後の公演で体力的にも限界が来ていたので「やはり自分はこの時期で辞めて正解だったな」とも感じました。ある意味、デトックスのようなことが起こったのかも知れません。

――この半年は美弥さんにとってはどういう期間でしたか?

 東京MXテレビさんの主催で8月には舞浜のアンフィシアターで、10月に大阪でライブがあり、9月には東京会館でトーク&ライブをさせていただいたので、そのための打ち合わせがすぐに始まりました。その間にファッションのお仕事をさせていただいたり、SNSの勉強もしましたね。仕組みも知らずに安易な気持ちで始めるのは怖いですから。

 17年間走り続けてきたので1回休まないとリセットできないと思っていたのですが、結局は1週間も休んでないかも知れません。でも、ありがたいことなので、いつか休みます(笑)。

2020.03.03(火)
Text=Chiaki Nakamoto
Photographs=MARCO
Styling=Marie Higuchi
Hair & Make-up=Hitomi Matsuno
Prop styling=Ai Ozaki