「うーーーん。言えないことも多いよね(笑)」
ーー香取さんはコンサートを今後何回できるのだろうかとか、逆に100まで生きられるなら時間が思ったよりある、というようなお話をされていました。
稲垣 わかる、わかる。でも健康寿命もあるし、80歳で元気な方もいれば、60代の方の訃報もあるから、僕も人生にやり残しがないように色々やらなきゃなとか、考えます。この年齢なら誰でもそうでしょうが。自分の人生は満足のいくものだったと思ってあの世に行きたい、という思いはある。だからといって今焦って何かをやらなきゃな、とまでは思わないけど。でも、ほんのチョットだけ焦りはあるかな。
ーー吾郎さんが、死ぬ前にこれだけはやっておきたいことは何ですか?
稲垣 うーーーん。言えないことも多いよね(笑)。
ーー結婚もしておきたいと思ったりします?
稲垣 まあ、それもなくはないよねえ。あとは具体的に言うと、僕は海外での生活経験がないので、それはしてみたい。タモリさんが『笑っていいとも!』をおやめになるときに、「これからは、いろんな海外に行きたい」って言っていたのがすごく印象的で。同じような気持ちは僕もあります。作家の沢木耕太郎さんのように、若いうちに海外を色々と旅することに憧れていたけれど、それができなかったという思いが実はあるんですよ。僕は語学は全然ダメだけど、旅はしてみたかった。
ーーまだまだ、できますよ。
稲垣 そうですね。「そんなの今、普通っしょ!」って逆に若い人に言われそうですよね。でも僕は芸能界でずーっと忙しくやらせてもらってきたから、そういう時間がなかった。今は日本からでも発信できるし、海外や世界を意識し過ぎること自体、もう古いって言われちゃうでしょうけど。でも実際に海外でその環境のなかに身を置いて生活をする、というのはやってみたいな。
ーー海外で暮らすのは、もっと年齢を経てからでもいいんですね。
稲垣 もちろん。僕の親もよく海外旅行に行ってるんですよ。特にいいなあと思ったのが、父親がエルヴィス・プレスリーの聖地があるテネシー州まで一人で行ったこと。それはすごいなと思いました。あの人こそ、まったく英語が喋れないのにね(笑)。
それに白井晃さんや中島かずきさんはじめ、自分が憧れる年上の人を見てると、みんなすごく元気なんですよ。60代になっても、お仕事に対する熱とか欲がすごくある。僕のラジオ番組(「THE TRAD」)で久々にお会いしたケラ(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)さんもそう。そんな先輩たちのように格好良く歳を取っていきたいという気持ちで、今回の舞台もやってますけどね。
ーー今、吾郎さんが海外に一ヶ所だけ行けるとしたら、どこに行きたいですか?
2023.04.07(金)
文=石津文子
撮影=杉山秀樹
スタイリング=黒澤彰乃
ヘアメイク=金田順子