この記事の連載
- 稲垣吾郎インタビュー #1
- 稲垣吾郎インタビュー #2
若いエネルギーに引っ張られている
稲垣 俳優にとって、持って生まれた資質や雰囲気というのは大きいものです。やはり自ずとサラブレッドらしさが出るものなんです。大鶴佐助さんも、王様らしさに通じる、そういうおっとりした雰囲気があります。そして、すごく声がいいですね。特にルイ16世の若い頃、戴冠式のときはまだ10代なので、揺れている感じが声だけで表現できているんです。「国を背負うのはまだ無理なんじゃない?」という心もとない感じですね。役に対する佐助さんの捉え方が出ていて、すごく面白い。だから僕はとても期待してしまうんです。彼のルイ16世に、サンソンである僕は惚れていくわけだから。
ーー惚れないといけないんですね。
稲垣 そうです。王に惚れて、仕える。気分はオスカルですから、僕は(笑)。佐助さんのルイ16世に期待してください。
ーー29歳の大鶴佐助さんはじめ、若い共演者に引っ張られる部分というのはありますか?
稲垣 あるある! もう、彼らのエネルギーに引っ張られてる。僕だけじゃなく、演出の白井さんも、他のみんなもきっとそうなんじゃないかな。こういう言い方すると、もうおじいちゃんみたいですけど(笑)。エネルギーだけじゃなくて、皆さん本当にお芝居が上手ですし。佐藤寛太さんもいいですねえ。ちょっとこう危なげな目つきとか、すごくナイーブな感じが伝わってくる。池岡亮介さんも、すごいんですよ。彼は昨年の舞台『マーキュリー・ファー』では、アンダースタディ(稽古代役)から急遽主人公を演じて、白井さんのピンチを支えたんですよね。
ーー北村匠海さんが体調不良で休演した時に、代役を務めたんですよね。
稲垣 そう。彼はまさに白井チルドレンですよ。ギロチンを作る実在の職人トビアス・シュミットを演じる崎山つばささんは、とても真面目にお稽古に取り組んでいてこれからの変化が楽しみですね。
ーー初演で若きナポレオンを演じた落合モトキさんの印象も強烈でした。落合さんは今回も同じ役で参加されています。
稲垣 落合くんはすごく進化してる。ナポレオンを自分なりに解釈しようとしてるのが、見ていて面白いですよ。演出家でもないのに、こんなこと言うとちょっと偉そうですが。でも僕は自分の役を演じていても、どこか客観的に周囲の俳優さんを見ちゃうんです。本当はそんな余裕を持っちゃいけないんでしょうが。それでも落合くんの変化を感じて、いいんですよねえ。ナポレオンの持つちょっと気持ち悪い、エキセントリックな魅力っていうのかな。只者ではないモンスター感が、一介の歩兵だった時のシーンにも感じられるので、楽しいですよ。
ーーモンスターを自分のなかで飼い慣らしているようなタイプですよね。
稲垣 そう。落合モトキ、いいよねえ。ベテランですが今回から参加される春海四方さんも、素敵なんです。殺陣の時とか、すごく動けるんですよね。さすが元・一世風靡セピア。実はまだ情報が解禁になっていない作品でもご一緒させていただいているので、春海さんとはとてもご縁があるんです。
『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-』
18世紀フランス革命。ロベスピエール、マリー・アントワネット、そしてルイ16世……彼らの首を刎ねたのは、たったひとりの死刑執行人だった。
その名は、シャルル=アンリ・サンソン。彼は死神か、聖人か? あまりに過酷で、あまりに非情な時代を生きた男の本当にあった数奇な運命の物語。
出演:稲垣吾郎、大鶴佐助、崎山つばさ、佐藤寛太、落合モトキ、池岡亮介、清水葉月、智順、春海四方、有川マコト、松澤一之、田山涼成/榎木孝明
演出:白井 晃
脚本:中島かずき(劇団☆新感線)
音楽:三宅 純
原作:安達正勝『死刑執行人サンソン』(集英社新書刊)
坂本眞一 『イノサン』に謝意を表して
【東京公演】2023年4月14日(金)~4月30日(日) 東京建物 Brillia HALL
【大阪公演】2023年5月12日(金)~5月14日(日) オリックス劇場
【松本公演】2023年5月20日(土)~5月21日(日) まつもと市民芸術館 主ホール
チケット料金(全席指定・税込):S席 13,500円、A席 10,000円/(松本公演のみ)B席 7,500円
https://sanson-stage.com/
2023.04.07(金)
文=石津文子
撮影=杉山秀樹
スタイリング=黒澤彰乃
ヘアメイク=金田順子