「徳川家康」と八丁味噌料理のコラボ?
ああ、そんな濃厚な八丁味噌蔵を見学すると、がぜん酒が飲みたくなる。地場の食材を八丁味噌と合わせた料理と地元の日本酒とのペアリングを考えたコースを特別に食べさせてくれるというフレンチレストラン「ビストロアンソン」へと向かう。
岡崎のブランド鶏「岡崎おうはん」の肉や卵に八丁味噌を合わせた料理と、岡崎の老舗酒造「丸石醸造」の銘酒「徳川家康」や「三河武士」のペアリングを堪能。
どの組み合わせも実に斬新かつ美味だったが、岡崎出身の古山潤一シェフは「八丁味噌は主張がはっきりしているので、フレンチに合わせるのに試行錯誤しました。岡崎は、あまり知られていませんが地場野菜の種類も多く、味噌と合わせた料理は今後も研究していきたいですね」と語る。
八丁味噌を使った「岡崎まぜめん」
八丁味噌を使った料理をいつ岡崎に行っても食べられる店をもう一軒、紹介したい。岡崎には、八丁味噌と地域の食材を使った「岡崎まぜめん」なるご当地グルメがあるのだ。麺ならうどんでもパスタでも中華麺でも、さらにはスイーツにしてもOKという、ざっくり……いや、おおらかなグルメである。
翌日は中華の気分であったので、創業昭和11年の老舗中華料理店、萬珍軒本店へと向かった。こちらの「岡崎まぜめん」は、ナス、ホタテ、挽き肉やカシューナッツなどの具材に八丁味噌を使ったタレを混ぜるというもの。きれいに盛り付けられた具材には申し訳ないが、ザクザクと混ぜていただくとさっぱりとした具材に八丁味噌の豊潤な味わいが重なり、これがうまいのなんの。
調子に乗ってご当地グルメとは関係のない、ご飯に、挽き肉と玉ねぎが入った味噌だれをかけ、豚の揚げ肉をのせた萬珍軒特製の丼物「萬珍飯」もいただくことにした。これぞ八丁味噌の本領発揮、濃厚な八丁味噌のコクとカリッと揚がった豚肉との相性が抜群だ。
岡崎の八丁味噌にガッチリ胃袋をつかまれ、後ろ髪を引かれたまま新幹線で東京に戻る。
せっせと遠く江戸まで八丁味噌を運ばせたといわれている家康殿の気持ちがなんとなく分かる旅であった。
2023.03.26(日)
文・撮影=白石あづさ