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みしょう、みしょ、みそ!

 さて、その神がかった「まるや」の味噌をいただく前に、そもそも味噌とは何者なのか。調べてみれば、古くから中国では叩き潰した肉や魚、塩と酒、雑穀の麹を混ぜて熟成させた「醤(しょう)」という発酵食品を造っていたそう。

 その一方、日本でも縄文時代、ドングリを発酵させて造った「縄文味噌」なるものがすでに造られており、独自に国内で進化を遂げたのではないかとも言われている。

 いずれにしろ、熟成途中の“未だ醤ではない”ものが「未醤(みしょう)」と呼ばれ、みしょう、みしょ、みそ、と早口言葉のような変遷を遂げて「味噌」と呼ばれるようになったらしい。

 平安時代の味噌は超貴重品として貴族や寺院などでしか口にできず、調味料として使うのではなく食べ物にそのままつけていたそう。それが室町時代には保存食として庶民にも浸透し、戦国時代に入ると兵糧として各武将の指示のもと味噌が生産されるようになる。

 江戸時代には各地の味噌が江戸に運ばれ、「医者に金を払うよりも味噌屋に払え」と言われるほどの健康食として庶民の間でも大ブームが巻き起こる。

 味噌と一口に言っても、大豆に米麹を加えて作る一般的な米味噌、主に九州や四国などで作られる大豆と麦麹を使った麦味噌、そして大豆のみを使った東海地方の豆味噌があり、八丁味噌はこの豆味噌の代表選手。

 「八丁」の由来は、岡崎城から西に八丁(約870メートル)にある八丁村(現・八丁町)の味噌だったから。距離が村の名前となり、そして味噌のブランド名になったとはおもしろい。

八丁味噌の嬉しいアレンジ

 見学を終えると、お待ちかねの試食タイムである。昔ながらの製法を見せてくれたが、出されたおつまみは、八丁味噌を現代風にアレンジしたピザトーストとアイスクリームであった。味噌を塗ったフランスパンの上にチーズとコーンをのせて焼いたり、アイスクリームに粉状の味噌パウダーをまぶしたりと、うまみが強い八丁味噌は乳製品との相性がいいようだ。

 さっぱりした白味噌とはまた違う、八丁味噌ならではの濃厚なコクと強い味噌の香り。このおつまみなら、ちょっとクセのある純米酒や赤ワインにも合うだろう。

2023.03.26(日)
文・撮影=白石あづさ