昨年はドラマ「拾われた男」、「初恋の悪魔」、「ジャパニーズスタイル」に出演。「仲野太賀出演作にハズレなし」と思ってしまうくらい、近年は映画・ドラマ・舞台ともに、数々の名作のなかで活躍している。
そんな仲野さんは、4月に舞台ウーマンリブvol.15『もうがまんできない』に出演する。宮藤官九郎さんが作・演出し、ふりきった笑いを繰り広げる大人計画の「ウーマンリブ」シリーズ第15弾である。
2月に30歳になったばかり。稽古開始直前の仲野さんに、本作について、演じることについて、あふれるカルチャー愛について語ってもらった。
先輩俳優への憧れ「悩んでいる姿を見たことがない」
――ドラマ「ゆとりですがなにか」や「いだてん~東京オリムピック噺~」など、宮藤官九郎さんが脚本を書かれたドラマには数々出演されていますが、舞台は今回が初めてなんですね?
そうなんです。ウーマンリブシリーズは、「七年ぶりの恋人」(2015年)を観て、自分史上一番、笑いました! 満席で、僕は補助席で観ていたんですが、笑い転げて椅子から落ちそうになった思い出があります(笑)。
とにかく突き抜けていて、舞台でここまでエッジを効かせるのかと衝撃を受けました。タブー視されそうなギャグも盛り沢山で、たまらなく好きでしたね。
大人計画は僕にとっては憧れの劇団ですから、今回、出演できることにとにかく興奮しています。
――『もうがまんできない』では、永山絢斗さんと「ずっと待ってるズ」というお笑いコンビを演じられるのだとか。
コンビのツッコミ担当の役なんですが、難しいです。僕は根がボケなので、できれば突っ込んでほしい(笑)。ツッコミはキレ味が大事なので、こだわっていきたいです。
永山さんとがっつりお芝居をするのも初めてです。胸を借りるつもりで、いいコンビネーションを発揮できたらいいなと思っています。
――宣伝のコメントのなかで、共演する大人計画の俳優さんらのことを「演劇怪獣」と表していらっしゃいました。舞台上で戦い合うというイメージですか?
いえ、戦い合うという意味ではないです。すごさをどう形容していいかわからなくて、そんな言葉になってしまいました(笑)。
僕はスロースターターというか、読み合わせや最初のテイクではうまく芝居ができないんです。あれこれ悩んで、いろいろ試しながら、現場で揉まれて、ちょっとずつ人様に観ていただけるような形になるタイプ。
でも、阿部(サダヲ)さんや皆川(猿時)さん、(荒川)良々さんは最初から「すげえ!」と思うような演技をされます。悩んでいる姿を一度も見たことがない。尊敬しかないです。
今回、稽古場では作られていく過程も見られるので、それもすごく楽しみです。学べることがたくさんあるので、研究したいと思っています。
――宮藤さんの脚本の魅力について、どんなふうに感じていらっしゃいますか?
僕なんかが語るまでもないですが、宮藤さんは圧倒的に面白い脚本をすごい頻度で書かれていますよね。時事ネタを笑いに昇華したり、笑いのなかに骨太なメッセージが隠されていたり。すごく柔軟で、時代とともにアップデートされている感じがします。
「あまちゃん」や「いだてん~東京オリムピック噺~」のような大人数が登場する作品でも、キャラクターがみんな魅力的です。演じてみてわかるのは、どのキャラクターにもすごく誇りがある。社会から虐げられていたり、周囲にバカにされていても、「俺はこう思っているんだ」という強い誇りを感じます。キャラクターに対する宮藤さんの誠実さをとても感じますね。
2023.03.28(火)
文=黒瀬朋子
撮影=今井知佑
スタイリスト=石井 大
ヘアメイク=高橋将氣