この記事の連載

 一度見たら忘れられない。映像や舞台で、強い存在感を放っている俳優の趣里さん。最新作は竹中直人監督の映画『零落』、原作は浅野いにおの同名漫画だ。

 若者たちを熱狂させた人気漫画家・深澤 薫(斎藤 工)が、表現の世界で自分を見失い、孤独の底に堕ちていく。暗闇のような日々のなか、“猫のような目をした”風俗嬢のちふゆ(趣里)と出会い、深澤は少しずつ変化をしていく。

 趣里さんに、最新作について語ってもらった。

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浮遊感みたいなものを表現したいと考えていた

――映画『零落』のちふゆ役は本当に素敵でした。ホテルのシーンは官能に満ち、どこか幻想的で、ちふゆは往年の映画スターのような美しさを放っていました。

 本当ですか? 嬉しいです。私は以前から、浅野いにお先生のファンだったので、ちふゆを演じられるのはとても光栄でした。原作の漫画を読んだときに、ちょっと浮世離れした、「ちふゆって本当に存在したのかな?」と思ってしまうような印象を受けました。そういう浮遊感みたいなものを表現できたらいいなと思いながら演じていましたね。

――ちふゆの、仕事ではない場面とのギャップもけっこうありましたね。

 そうなんです。普段はショートパンツをはいていて(笑)。パーソナルな部分で、孤独や苦しみを抱えている女の子と感じていました。ふとこぼした言葉が寂しげだったりして。深澤に心を開いていく経緯が美しくもあり、近づいてしまったがゆえに距離も生まれたり。そこが切なかったですね。

2023.03.13(月)
文=黒瀬朋子
写真=松本輝一
ヘアメイク=カワムラノゾミ
スタイリスト=中井綾子(crépe)