この記事の連載

一度役柄を体に通した後、うまく手放す。そんな感覚を大切にしています。

――趣里さんはとてもよく考えるタイプと伺います。役に対してもロジカルに準備をされるのでしょうか。

 台本を読みながら、役とは別目線でシーンの目的や作品の行き着く先については自分なりに解釈します。でも、芝居はひとりでするものではないですし、ロジカルに作りすぎて自分の考えた方向に進まないと苦しくなってしまうんですね。

 ですから、いったん体を通したあとは、考えてきたことを現場で忘れる、手放す、相手に委ねるようにしていますね。セリフのやりとりを、実際の会話のように楽しむイメージです。なかなか難しいですけどね(笑)。

――映像のお仕事では、モニターを見てご自身のお芝居をチェックしますか?

 それはしません。(芝居の)返しもできればあまり見たくないです。えー、こんな顔をしてたんだ! とショックを受けるので(笑)。

 やっぱり一番いいのは、カメラを意識せずに相手の役者さんと(本当の)やりとりができたときです。生っぽさみたいなものを目指していますが、物理的にカメラ目線を求められることもあります。ガチガチに決めつけないで、現場ごとに監督や演出の意向に臨機応変に対応できるようにしたいなと思っています。

趣里(しゅり)

1990年生まれ、東京都出身。2011年にドラマデビュー。主な出演映画に、『おとぎ話みたい』(14年)、『勝手にふるえてろ』(17年)、『流浪の月』(22年)、『もっと超越したところへ。』(22年)。2018年の主演映画『生きているだけで、愛』にて、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。2023年度後期放送のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』にて、ヒロインを演じる。

映画『零落』

原作:浅野いにお『零落』(小学館ビッグスペリオールコミックス刊)
監督:竹中直人
脚本:倉持裕
出演:斎藤工、趣里、MEGUMI、山下リオ、土佐和成、永積崇、信江勇、宮崎香蓮、玉城ティナ/安達祐実
製作幹事・配給:日活/ハピネットファントム・スタジオ
2023年3月17日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー

©2023浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会

次の話を読むやっぱり私、体育会系なのかも(笑) ストイックな趣里の自分へのご褒美は 食事。朝ドラでは大阪グルメが楽しみ

2023.03.13(月)
文=黒瀬朋子
写真=松本輝一
ヘアメイク=カワムラノゾミ
スタイリスト=中井綾子(crépe)