カルチャーに「救われてきた」
――仲野さんは13歳からお仕事をされていて、お芝居の才能もお持ちです。とはいえ宮藤官九郎さんのほかにも、岩松了さんの舞台に5回も出演されたり、坂元裕二さんや、西川美和監督、今泉力哉監督、深田晃司監督、石井裕也監督ら、そうそうたるクリエイターのみなさんと20代のうちにお仕事されているって、すごいことだと思います。
確かにそうですね(しみじみ)。お世話になった方々を思い浮かべると、本当にいろんな人に育てていただいたなと感じています。尊敬する方々とたくさんお仕事させていただいているので、もっともっとこのカルチャーを盛り上げていきたいし、自分も、次の世代の人たちに「こういう面白い世界があるんだ」と思ってもらえるような作品をたくさん残したいなと思いますね。
演劇も映画もドラマも大好きですし、僕はそういうものに救われてきたので。
――「救われた」という感覚なんですか?
そうですね。音楽も含めて、膨大な時間、カルチャーに触れてきました。もしも、そこを通らなかったら、自分がどうなっていたか、見当もつかないです。俳優にはなっていないでしょうしね。
宮藤さんなんて、僕は小学生のときからファンですから! 役者さん以外で、最初に覚えた作り手の名前は「クドカン」だったと思います。
――えー! それはすごい。
一番最初に観た宮藤さんの作品は、映画『ピンポン』(02年)かドラマ「木更津キャッツアイ」(02年)。「~キャッツアイ」は友達もみんな観ていました。僕は小学生のころから、お年玉で映画やドラマのDVDを買い集めていたのですが、宮藤さんの作品ばかりですもん(笑)。
そんな人とこんなにたくさん仕事をさせてもらえるなんて思いませんでした。
――初タッグを組まれたドラマ「ゆとりですがなにか」(16年)の、ゆとりモンスター山岸役は衝撃的でしたよね。
あの作品は、これまでの人生で一番大きな転機だったと思います。
――お年玉をつぎ込んだ甲斐があったと、小学生のご自分に言えますね(笑)。仲野さんの抜群のコメディセンスは、もしかして、宮藤さんの影響が大きかったのでしょうか?
もしも、僕にそんなセンスがあるのだとしたら、原体験は宮藤官九郎さんです。僕ら世代はみんな影響を受けていると思います。今年のお正月にNetflixで「池袋ウエストゲートパーク(IWGP)」の配信が始まったのですが、友達みんな観てましたから! 「いま何してんの?」と連絡すると「IWGP観てた」「『タイガー&ドラゴン』観てた」と(笑)。
「『IWGP』みたいなドラマを作りたいんです」ってここ10年、何人ものプロデューサーさんから聞きました。どれほど伝説のドラマを作ってこられたのか!
――これはもう、『もうがまんできない』を目撃しないわけにはいきませんね。
子供のころから観客として触れていた、大人計画の世界。同じ舞台に出られるって、自分がどんなことになるのかまだ想像つきませんが、とにかく必死についていきたいです!
仲野太賀(なかの・たいが)
1993年生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。2008年『那須少年記』で初主演を務める。2021年の映画『すばらしき世界』で、日本アカデミー賞優秀助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞などを受賞。最近の主な出演映画に『静かな雨』(20年)、『生きちゃった』(20年)、『泣く子はいねぇが』(20年)、『すばらしき世界』(21年)、『あの頃。』(21年)、『ONODA 一万夜を越えて』(21年)、『ぜんぶ、ボクのせい』(22年)、『ある男』(22年)など。ドラマに「拾われた男」(22年 Disney+、NHK)、「初恋の悪魔」(22年 日本テレビ)、「ジャパニーズスタイル」(22年 テレビ朝日)など。ドラマ「ひとりぼっち―人と人をつなぐ愛の物語―」が4月9日に放送。
ウーマンリブ vol.15『もうがまんできない』
作・演出:宮藤官九郎
出演:阿部サダヲ、仲野太賀、永山絢斗、皆川猿時、荒川良々、宮崎吐夢、平岩紙、少路勇介、中井千聖、宮藤官九郎
【東京公演】2023年4月14日~5月14日 本多劇場
お問い合わせ:大人計画03-3327-4312(平日11:00~19:00)
【大阪公演】2023年5月18日~31日 サンケイホール ブリーゼ
お問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~18:00 ※日祝休)
2023.03.28(火)
文=黒瀬朋子
撮影=今井知佑
スタイリスト=石井 大
ヘアメイク=高橋将氣