この記事の連載
- 絹田村子インタビュー #1
- 絹田村子インタビュー #2
横辺建己(よこべたてき)は、一度見たものは忘れない驚異的な記憶力の持ち主。ノーベル賞を目指して京都の名門・吉田大学理学部へ入学するが、大学の微分積分学の講義で大きな挫折を味わう。
大学数学をテーマにした『数字であそぼ。』(小学館フラワーコミックスアルファ)は、『月刊flowers』(小学館)で連載中の人気漫画です。現役の研究者が推し本として取り上げることもある同書。3月9日の第9巻発売を記念して、制作秘話を作者の絹田村子さんに伺います。(インタビュー【後篇】を読む)
大学で数学を専攻していた人とお酒の席で
――なぜ大学数学をテーマに漫画を描いたんですか?
絹田 前の連載が終わる頃、お酒の席で、大学で数学を専攻していた方と一緒になったんです。お話を伺っていると、「私が学んできた数学と、何か違うな」と感じて。
例えば、「1+2+3+4…+99+100」を考える時に、1つずつ数字を足していく方法もあるけれど、面積で考える発想があるそうです。私にとって、面積は面積を求める時だけに考えるものだったので、発想の転換に驚きました。
――そんな方法があるんですね。発想の転換でいうと、漫画では「トイレットペーパーを切って三角形にし、円の面積を求める」(第2話/1巻収録)描写がありました。
絹田 それと近いですよね。漫画を読み進めると感じるかもしれませんが、数学って実は抽象的な学問なんです。でも普通はそれがなかなか理解できない。なぜならリンゴやミカンといった現実世界の算数から学び始めるから。数学が抽象的な世界だなんて思いもしないんですよね。
そういうことを知ると、数学って驚きがあって面白そうだし、取材相手になりそうな方とも知り合えたから、テーマにしてもよさそう。そんなことを編集担当者さんにポロッとこぼしたら、「良いじゃないですか」と言われて。それで、「あ、これはやるんだな」と始まりました。
2023.03.09(木)
文=ゆきどっぐ