この記事の連載

 「吉田大学の理学部の募集人数ってね、毎年301人なんだ。(中略)でもそれには理由がある。たった一人の“天才”という原石を磨くためだけに、残り300人は存在している。その象徴なんだってさ……」(第4話/1巻収録)。

 漫画『数字であそぼ。』で語られる吉田大学の現実を現す一節。作者の絹田村子さんに元京大生への取材やキャラクター、今後について伺います。(インタビュー【前篇】を読む)


抜群の記憶力が役立たない主人公・横辺建己

――主人公の横辺くんは記憶力抜群ですよね。役立つことが多そうなのに、大学数学ではまるでダメ、というギャップが面白いです。

絹田 大学数学の対極の存在ですよね。問題のパターンなどが丸暗記できれば、京都大学へ入学できるケースもあるらしくて。「驚異の記憶力の持ち主なら、もしかすると入学できるかも」と、考えました。

 彼は周りに比べて没個性的で埋もれがちですが、嫌な出来事もずっと記憶しているはずなので苦労していると思います。

――キャラクターではないですが、夏目まふゆが崇める数学者のラマヌジャンも印象的でした。独学で数学を学んだインド人で、実在の人物なんですね。

絹田 私も今作を執筆するにあたって、初めて知りました。まふゆが代数学の整数論を専攻することを決めたときに、その界隈で有名な数学者を知人に教えてもらったんです。何人か挙げてもらった中で、一番変わっていて面白そうな人を取り上げました。

――キャラクターを考える上で大切にしていることはありますか?

絹田 それぞれの価値観を決めるようにしています。例えば、北方(創介)は首元の苦しい服は絶対に着ないとか。彼は首に何かあたるのが好きじゃないんです。そういうどうでもいい癖なんかを考えると、見えてくる気がします。

2023.03.09(木)
文=ゆきどっぐ