この記事の連載

キャラクターは元京大生の姿から

――今作のキャラクターは、取材相手の元京大生からも着想を得たのでしょうか?

絹田 そうですね。取材相手の知人のほかに、知人と同じゼミだった方々からもお話を聞いて練り上げました。スロットにハマって留年したり、お金のことばかり考えていたり、鉄道マニアだったり、学生時代はさまざまな方がいたそうです。皆さん、飛びぬけて好きなことがあって、こだわりが強いところが共通点かもしれませんね。

――取材相手の方々は、現在就職されているんですか?

絹田 私の取材相手はほとんど就職しています。お話を聞いた限りでは、最初は研究職を希望して入学するものの、「自分よりすごい人がいる」と挫折して就職するケースも多いようですね。体感では、理学部の場合は金融系が就職先として多いようです。

「とか」「など」が入るだけで解釈が変わる数学の世界

――漫画で数学を取り上げる際に気を付けていることはありますか?

絹田 言葉遣いにはかなり気を付けています。というのも、知人から説明を受けているときに「だいたい」「ざっくり言って」みたいな言い方をされることがあるんですが、言い回しを整えようとすると「そういう言葉は変えたり飛ばしたりしたらダメ!」と注意されるんです。「とか」「など」を入れるだけで解釈が変わるので、すごく厳密な世界だな、と思います。

 それに、記号も面白いですね。『月刊flowers』(小学館)は総ルビの雑誌で、記号にもルビをふるのですが、知人に読み方を聞くと「わからない」って返ってくることがあるんです。数式を書けば、読み方がわからなくてもコミュニケーションとして成立するのが興味深いです。

――『数字であそぼ。』を研究職の方が推し本に挙げていましたが、そういう丁寧な描写が刺さるのかもしれませんね。

絹田 そうだと嬉しいですね。数学はSNSで話題になることがあるので、間違えないようにかなり気を付けて載せています。それでも間違うことがあるのですが……(笑)。

2023.03.09(木)
文=ゆきどっぐ