この記事の連載

リアルな「京都の学生あるある」も

――吉田大学は、京都大学から着想を得ていますよね。東大ではなく京大をモデルにしたのはなぜですか?

絹田 取材相手が元京大生だったからです。それに、私も学生時代は京都で過ごしたので、「学生はあの辺りで遊ぶ」といった京都の学生の雰囲気がなんとなくわかるのも決め手でした。

  あとは私の地元が奈良なので、帰省ついでにいろいろ取材ができるのも後押しになりましたね。

――なるほど。だから自転車の撤去(第25話/5巻収録)や、「大学〇年生」ではなく「〇回生」と呼ぶ場面など、「京都の学生あるある」がリアルなんですね。

絹田 京都の学生って自転車社会だから、本当はもっと自転車を登場させるべきなんですよね。京都大学のキャンパス内も自転車移動が多いらしいので。

 でも、どうしても作画が大変で……。登場回数が減ってしまいがちです。

――漫画に出てくる大学数学に、京大っぽさはあるのでしょうか。

絹田 あるのかもしれませんね。別の大学から京大の大学院に進学して、大変な思いをすることもあるようです。なので、大学で数学をどこまでやるかは、大学ごとに多少カラーがあるのではないでしょうか。

2022年に京大理学部を訪問。きっかけはSNSのDM

――2022年4月には京都大学理学部を訪問されました。どういう経緯で実現したんですか?

絹田 「遊びに来ませんか」と京都大学の広報担当者さんからSNSのDMでお声掛けいただいたんです。漫画を読んでくださっている方が大学にいて、「うちの大学が舞台だよね。なんでこんなに詳しく描けるんだろう。ひょっとして、内通者がいるのか!?」と話題になったらしいです(笑)。

 訪問した時は温かく迎えていただいて、理学部の数学科以外の教授ともお話しができました。学内を案内していただいたので、理学部全体の雰囲気を感じられましたね。

――印象的だった出来事はありますか?

絹田 大学職員の方から、「理学部に通う学生の保護者に漫画を見せて、自分の子どもがどういうことをしているのか知ってもらっている」と教えていただいたことです。自分の子どもがどういう価値観を大切にしているのか、理解するのに役立っているそうです。

 京都大学への訪問では大学近くのラーメン屋や喫茶店も取材できたので、京大生の生活をより感じることができました。

» インタビュー【後篇】に続く

絹田村子(きぬた・むらこ)

9月24日生まれ。奈良県出身。『月刊flowers』(小学館)2008年9月号でデビュー。代表作に2017年にドラマ化された『重要参考人探偵』や『さんすくみ』がある。自画像の頭の葉は、デビュー当時の髪型・おかっぱボブと形が似ていることから決めた。

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次の話を読むスロットで留年、お金好きに鉄道マニア…マンガ『数字であそぼ。』取材で見えた京大生の“変なこだわり”と“就職先”

2023.03.09(木)
文=ゆきどっぐ