ベストセラー作家の小説を映画化、チョコが起こすファンタジー

◆『ショコラ』(2000年/U-NEXT)

映画『ショコラ』。
映画『ショコラ』。

 『ショコラ』はチョコレートを通じて描かれた、ファンタジー溢れる童話のようなストーリー。イギリスのベストセラー作家であるジョアン・ハリスの同名小説を映画化したもので、“忠犬ハチ公”を映像化した『HACHI 約束の犬』を手がけたラッセ・ハルストレムがメガホンを取っています。

 ヒロインを演じたのはフランス出身の映画女優ジュリエット・ビノシュ、お相手はジョニー・デップ。さらに『007』シリーズの「M」役で知られる名優ジュディ・デンチ、ハルストレム監督の妻で『存在の耐えられない軽さ』でジュリエット・ビノシュと共演したレナ・オリンなど、実力派俳優たちが個性あふれる村人を演じます。

 舞台は1959年のフランス、ある冬の寒い日に北風とともに赤いマントを羽織った母娘が小さな村ランスケに現れます。その2人はヴィアンヌとアヌークといい、老女アルマンドから部屋を借り、人々の好奇の視線を浴びながら小さなチョコレート店「マヤ」を営み始めます。ヴィアンヌの売るチョコレートは評判となり、やってくるお客はみな、ヴィアンヌの店のチョコレートの虜に。しかし、もうひとりのよそ者であるルーが町へやって来たことで、ヴィアンヌは自分の欲望に気づくのでした。

 本作の見どころといえば、やはりショーケースに並ぶ魅惑的で美味しそうなショコラたち。その香りまでも画面越しに漂ってきそうで、観ている最中にチョコレートが食べたくなってしまいそう。そのショコラをどのように演出して、村人たちとの関係性を変えていくのかがさらなる注目ポイント。村の厳格な空気感によって敬遠しながらも、あらがえない食欲によってショコラに惹かれ、口をつけてしまう人々のリアクションもバラエティに富んでいます。

 甘くてほろ苦い大人のロマンス映画『ショコラ』、ぜひチョコレートをお供に楽しんでほしい作品です。

あらすじ

フランスのある村に突然やってきた見知らぬ母娘は、チョコレートショップを営み始める。美しくも謎めいた母親のヴィアンヌの売るチョコレートはたちまち評判となり、ヴィアンヌとそのチョコに関わった人々は次第に変化していく。

2023.02.11(土)
文=加藤棗(A4studio)