キレイな面も汚い面も出せる役者に

――会見にて「ありのままの自分を受け入れてくれた、認めてくれた」というお話がありました。これまで、ありのままの自分を出すことについては控えていたんでしょうか? 

 ありのままの自分を出すのは、恐怖でした。

 正直に話しますと、競争世界で生きているので「どうやったら人気が出るのかな?」みたいことを考えてずっと生きてきたんです。「多くの人に好かれたい、じゃないとデビューできない」みたいな気持ちがあったので、自分を隠していたところは絶対にありました。人気を獲得するためには、どストレートにたくさんの人に届くことが大事だと意識していたんです。

 けど、それではこの先何も生まれないし、年齢も重ねてきましたし、これまで出さなかったところを見せた上で、応援してくれる人が残ってくれたらいいな、と思っているんです。これから役を通してもっともっとキレイなところも、汚いところも出していきたいですし、それが今の自分のやりたいことです。

――今回アキラという役をやったことで、少し殻を破ったような感じがありますか?

 見てくれた方の判断になるので、破れたかどうかはわかりません。でも、自分としては今までにない感情になれたことは間違いないです。

――これまでの正攻法を崩してみること、自分を変えることは非常に勇気のいることだと思います。先ほどお話された理由以外に、なぜ踏み出せたと思いますか?

 確かに勇気のいることではありますけど、チャレンジは、悩んでやる前がやっぱり一番怖かったです。今はやっちゃった後なので、意外とすっきりしていて。どういう風に逆に皆さんが捉えてくれるのかが楽しみではあります。

 以前、先輩から「山下は新幹線で目的地に行きたいんじゃなくて、自分で車で運転して行きたいんだね」と言われたことがあって、その通りかもしれないとハッとしたんです。新幹線で目的地に向かうのは快適だし、最短でたどり着けるからその良さがある。でも自分の足で知らない道を開拓しながらゴールにたどり着くと、通ってきた道も覚えていられるじゃないですか。ナビに頼っていると道は覚えないですし。

 だから苦労が伴うけど、もうちょっと自分の中で記憶にしっかり焼き付けられるようなプロセスも楽しめると思うし、そういう生き方がしたいんです。とはいえ、まだ模索中で全然答えも出ていないですけどね。

――今回、お話を伺っていて、非常に情熱を秘めている方という印象を受けました。その自覚はありますか?

 情熱的なところ、あるかもしれないですね(笑)。仕事に対する情熱は温度高めだと思います。

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山下智久(やました・ともひさ)

1985年、千葉県出身。 1996年より芸能活動を開始し、「池袋ウエストゲートパーク」(2000/TBS)、 「ロング・ラブレター〜漂流教室〜」(02/CX)、「ランチの女王」(02/CX)などに出演。2003年CDデビュー。 主な出演作として、「野ブタ。をプロデュース」(05/NTV)、「クロサギ」(06/TBS)、「コード・ブルー」シリーズ(08,09,10,17/CX)、『あしたのジョー(11/曽利文彦)、『近キョリ恋愛』(14/熊澤尚人)など。近年は海外作品にも積極的に参加しており、2022年にはパトリック・ヒューズ監督による『ザ・マン・フロム・トロント』が全米公開を控えている。 現在ドラマ「正直不動産」(NHK総合)に出演中。Huluオリジナル「Drops of God / 神の雫(仮題)」が‘22年配信予定。

「TOKYO VICE」

舞台は1990年代、バブル期直後の東京。東京の大学を卒業したアメリカ人のジェイク(アンセル・エルゴード)は、日本語を猛勉強し日本の大手出版社に就職する。警察担当記者となり、先輩の詠美(菊地凛子)のもとで経験を積んでいく。ヤクザ絡みの事件を担当する片桐(渡辺謙)と出会い、危険な闇社会に足を踏み入れることになり……。風俗街で暗躍する刑事・宮本(伊藤英明)、ヤクザのリーダー・佐藤(笠松 将)、謎めいたカリスマホスト・アキラ(山下智久)たちの人間模様が入り組み、疾走感あるストーリー。

出演:アンセル・エルゴート/渡辺謙/レイチェル・ケラー/菊地凛子/伊藤英明/笠松 将/山下智久
監督:マイケル・マン/ジョセフ・クボタ・ラディカ/HIKARI/アラン・プール

2022年4月24日(日)より WOWOWにて独占放送スタート(全8回)
WOWOWオンデマンドにて第1話配信中
https://www.wowow.co.jp/drama/original/tokyovice/

2022.12.30(金)
文=赤山恭子
写真=佐藤 亘
スタイリスト=宇佐美陽平(BE NATURAL)
ヘアメイク=北一騎