会社が苦しいときに踏ん張れる理由

遠山:DEAN & DELUCAは食のセレクトショップで、パンなんかはいろいろなお店に毎朝、DEAN & DELUCAの車が商品を取りに行って、買い取るわけですから、コストも高くて、ビジネスモデルとしては、かなりたいへんですよね?

横川:そうなんです。マンハッタン島は日本でいうと世田谷区と同じ大きさ。そこに何百軒ものベーカリーがあって、ニューヨークでは、自転車で各店からソーホーのDEAN & DELUCAに持ってくるんです。また、もともとニューヨークでは、レストランでも自店で焼いたパンを、周辺のグロッサリーに提供したりしていた。そういうビジネスモデルがもともとあったから、DEAN & DELUCAのやり方が成立していたわけで、それをそのまま規模の違う東京に持ってきてもうまくいかなかった。7年ぐらいやりましたが、あまりにムダが多いので諦めて、3年前からベーカリーはうちのシェフたちが半分以上焼いています。

遠山:ということをやりながら、いまや年商60億ぐらいですか?

横川:そうですね。10年目で18店舗で、11月に久しぶりに有楽町に大きな店を出す予定です。

遠山:1店舗で8000万円くらい売り上げる店もありますね。

横川:品川がそうですね。

遠山:よかったね、品川店を改装して(笑)。みなさん、ビジネスをやっているとね、お金が出るほうはツルツルツルツル出ていくんですが、入るほうはなかなか入ってこないんですよ。これってゾッとするよね?

横川:人様にお金を借りて、3年ぐらいで返しますと約束してお店をつくるじゃないですか。でもあっという間に時間が過ぎて、返済まであと1年になってしまう。「もうダメかな」と思うんですけど、そうなると意外とアドレナリンが出る。1年で3年分稼がなきゃいけないから、寝るとか寝ないとかそういう話じゃない(笑)。

遠山:みなさん、本当にこう見えて苦労してるでしょ?

横川:今はしっかり寝てますけど(笑)。

遠山:でもやっぱり、DEAN & DELUCAもそうですが、人が憧れ、自分も好きで、世の中にいいことをしている、というのがあるから、厳しいときに踏ん張れますよね。

横川:そうですよね。

遠山:ショボいものだったら、そこまでできない。

横川:お店のことを、友だちや仲間に「いいね」って言ってもらえるとすごくうれしい。友だちがリアルなお客様であるような仕事ばかりしているので。

遠山:みんなに「ダサい」とか言われたらイヤだから、最初の設計はちゃんと高くしておかないと、踏ん張れない。

横川:そうですよ。だから、誰かに「こっちのほうが安いです」「こっちのほうが儲かります」と言われても、友だちや遠山さんに「ダサい」とか「あ、横川くんやっちゃったな」と言われるようなことなら、絶対「やりません」と言います。

遠山:2012年に始められたライフスタイルショップ「TODAY'S SPECIAL」もいいですね。

横川:約10年前に世界中のデザインを日本に届けたいと「CIBONE」をつくったんですけど、より日常に近い自由が丘のような所では形よりもっと生活になじむもの、ソファも眺めるより座るものを、とお客様がリアリティを大事にし始めたなと感じているので、形から中身に興味が移りました。そこで、「TODAY'S SPECIAL」を、「今日の特別を」「今日を特別に」という意味で、暮らしの商店、マーケットというテーマで始めました。お店としてこれからどう成り立っていくかはわからないけど、始められてよかったなと思っています。

遠山:えらい! どんどんお店が増えていってくれるといいね。

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2013.11.15(金)
text:Rika kuwahara
photographs:MIki Fukano / Nanae Suzuki