「Soup Stock Tokyo」を主宰する遠山正道氏が2012年に開催し、単行本にもなった大人気講座「おいしい教室」が、東京・丸の内を舞台に帰ってきました。今度はどんなお弁当が登場するのか!? 今年も毎回、多彩なゲストをお迎えして、テーマに沿ったお弁当を持ちよります。この連載では、講座で行われたゲストとの対談、そしてゲストや参加者が選んだステキなお弁当を紹介します。
第6回テーマ 「日本のクリスマス」のお弁当
ゲスト:笹島保弘(イル ギオットーネ オーナーシェフ)
笹島保弘(ささじま やすひろ)
1964年、大阪生まれ。高校を卒業後、アルバイトしたレストランでの仕事が楽しくて、関西のイタリアンレストラン数店で修業したのち、24歳でシェフになる。2002年、京都に「京都発信のイタリアン」を目指し、オーナーシェフとして「イル ギオットーネ」を開店。2005年には、東京・丸の内にも出店する。2007年にはイタリア・ミラノで開催された料理サミットに、日本人として初参加。現在、京都に3店舗。2013年、大阪に東京・代々木のレストラン「コードクルック」とコラボした「コードクルック プラス イル ギオットーネ」を開店した。また丸の内シェフズクラブ(外部サイト)のメンバーでもあり、食育活動など幅広く活躍中。
遠山 笹島さんは京都に何店もお店をお持ちで、丸の内にもお店がありますから、京都と東京を行き来してらっしゃいますが、いつもこの格好なんです。
会場 えー!
笹島 新幹線でも、このまんまで。
遠山 その服は何着お持ちなんですか?
笹島 相当あります。今日はそのなかでも勝負服を着てきました(笑)。新幹線に乗るとき、JRの人も最初はこの格好を見てビビってたんですけど、今は普通に「お疲れ様です」と声を掛けてくれます。
遠山 京都と東京はどれくらいの頻度で行き来するんですか?
笹島 かなりの頻度です。丸の内のお店はご縁があってやらせてもらいましたが、おかげで人との繋がりが増えました。東京は僕にとってパリやニューヨークのような場所。そういうところにお店を出させてもらって、自分の幅がめちゃくちゃ広がりました。京都だけでやっていたら、ミラノの料理サミットにも呼ばれなかったと思うんです。
遠山 京都と東京では何が違いますか?
笹島 京都では京都で採れたものを食べるのが基本。一方、東京では、日本中、世界中のものを集めて料理をつくります。面白いのは、旬が違うこと。例えば、京都で夏に「アユとブロッコリーのパスタ」を出したら、お客さんに「あほか、お前は」と言われてしまいます。京都で夏にブロッコリーは採れませんから。でも東京では、長野のブロッコリーを使って、夏でもつくれます。
遠山 なるほど。
笹島 和食は先日、世界無形文化遺産に選ばれましたね。あれは初めは、「京料理を世界遺産に」ということだったんですが、範囲を広げないと厳しいと、和食になったんです。
遠山 和食には家庭料理も含まれるのかな?
笹島 肉じゃがやハンバーグも含まれるそうですよ。
遠山 ナポリタンとかも?
笹島 そうですね、たらこスパゲティも。これはイタリア人に出したら、いちばん喜ばれるんです。
遠山 へえ!
笹島 僕はたらことオリーブオイルだけでつくるんですが、「めちゃめちゃうまい」と本当に喜ばれる。日本人はほかの文化を吸収してオリジナルをつくることに非常に優れています。
遠山 イタリアのレストランはどうですか?
笹島 小洒落たレストランなら、日本のほうがおいしいかもしれませんが、100年続いているような食堂などに行くと、これはもう、なんか入ってるんじゃないかと思うくらいおいしい。帰ったらまたすぐ行きたくなるような店があります。ローカルフードというのは、どの国でも目を見張るものがある。しかし日本、とくに東京はラーメン屋もそば屋もどこに入ってもうまい。海外の人も、「どこに入っても外れがない」と言います。だからみなさんは、世界最高レベルのものを食べているんですよ。
遠山 たしかに外れがない。
笹島 今日はたまたまここに来る前に、東北のたくさんの生産者さんが集まった大きな復興支援の会議に参加してきました。日本では、福島のものでもなんでも、ちゃんと検査を通っているものは、世界最高水準の安心で安全な食材なんですよ。
遠山 そうですね。
笹島 風評被害というのは、人間のすることだから、あって当たり前なのかもしれませんが、生産者さんたちはそれをどうすることもできない。だから、お客さんの前に食材が並ぶ直前にいる、最終ラインの僕らが自信をもって勧めていかないと。そのために、僕たちが現地の生産者さんたちと繋がってやっていく。
遠山 はい。
笹島 僕も初めて知ったんですが、丸の内には、レストランが450店舗もあるそうです。丸の内のレストランだけが東北の食材を使ったとしても、毎日どれくらい消費できるか。
遠山 すごい量になりますよね。
笹島 そうなんです。だから、うまくコーディネートしていく。声高に言う必要はなくて、僕たちは安心・安全でおいしいから東北の食材を使っているだけだし、お客さんもおいしいから食べるだけ。現地に行ってのボランティアも大事ですが、そういうやり方で毎日の食に取り入れていくだけで、未来永劫、東北の役に立てるんです。
2013.12.21(土)