プロダクトデザイナーになりたかった

遠山 ジャンルとして「イタリアン」と言っても、「イタリア料理なんてない」ともナポリなんかでは言います。笹島さんは、いわゆるイタリアンという枠を超えて、やっていきたいことはありますか?

笹島 僕は「イノベーティブ・イタリアン」と言っているんですが、「新しい切り口のイタリアン」です。いまとなっては僕のつくる料理を何料理と思われてもよくて、それは何であっても僕の料理です。でも僕はイタリア料理しかやってきていないので、感覚がイタリア人。だから、例えば味噌とかしょう油などの調味料は使わないんです。

遠山 へえ!

笹島 パルメザンチーズやアンチョビ、オリーブオイルにも、同じうま味成分があるんです。だから僕の店で使う食材は、黒トリュフや白トリュフ以外、99%が日本の食材ですが、調味料はイタリアやスペインなど、ヨーロッパのものを使っています。

遠山 和食をベースにされているのかと思っていましたが……。

笹島 例えば、和食のお店でたけのこを炊いたものを食べて、「おいしいな」と思っても、どうやってつくっているか聞きません。その代わり、自分がたけのこを炊くなら……と考える。僕の店では、たけのこをパルメザンチーズの皮と生ハムのくずで炊いてるんですよ。

遠山 えー! そうなんですか。

笹島 温かいと香りで生ハムで炊いたとわかりますが、冷めたら絶対にわかりません。かつおだしで炊いたと思いますよ。うま味の成分が「イノシン酸」で同じだから、わからないんです。日本の調味料を使わなくても、同じようなうま味をもつ食材は世界中にある。京都では、夕方5時になるとかつおだしの香りが立ちこめます。あれがすごくいい。それは僕が日本人だからそう思うわけです。調味料がその国の食文化を形成して、それがDNAになっているんです。でも僕はイタリア料理をやってますから、「イタリア料理の眼鏡」をかけているようなもの。だから、イタリア料理の食材でしかピントが合わない。そう考えると、僕が味噌やしょう油を使ってイタリア料理をつくっても、説得力がないでしょう? だから使う必要がないんです。

遠山 素材から料理を組み上げていく感じですね……しかし、去年からこの教室を続けていますが、こんなにしゃべる人はいませんでしたね(笑)。笹島さんには、伝えたいことが本当にたくさんあるんですね。

笹島 あはは、おもわず、しゃべっちゃうんです。しゃべりすぎですかね(笑)。

遠山 いえいえ(笑)。笹島さんは、最初から料理人を目指していたんですか?

笹島 いいえ、高校を出るまで、目玉焼きも焼いたことがありませんでした。ずっとプロダクトデザイナーになりたかったんですけど、アルバイトでレストランで働き始めたら面白くて。

遠山 きっかけはアルバイトですか。

笹島 はい。高校を出たら、あとは自分で生きろ、というのが我が家の教えだったので、アルバイトを始めて。それがたまたまレストランだったんですが、仕事が楽しくて。

遠山 キッチンで働いていたんですか?

笹島 いいえ、最初はサービスでした。僕は、料理だけでなくて、レストラン自体が好きなんです。レストランや、ホテルが。今もホテルや旅館によく泊まって、使われているカトラリーや皿、トイレットペーパーなんかも見て、「ここの人はこういうのが好きなんだ」と考えたり、部屋のしつらえを見るのが好きです。

遠山 丸の内にお店を出すときも、目的もないのに買っていったお皿などがたくさんあったそうですね。

笹島 照明器具も買いました。皿や椅子もすぐ衝動買いするので、それ用に京都に小さいマンションを借りてます。何を買ったかもすぐ忘れてしまうので、大掃除をすると、「うわーこんなとこにあったか」となる。

遠山 私は「パスザバトン」というリサイクルショップもやっているので、ぜひ今使っているものを一掃していただいて……(笑)。

笹島 あははは、捨てられないんですよね、なかなか。

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2013.12.21(土)