笹島さんと遠山さんのお弁当を拝見

遠山 今日のお弁当のテーマは「日本のクリスマス」ですね。笹島さんはどんなお弁当ですか?

笹島 僕は大きな重箱を注文したつもりだったんですが、手違いで女子会に持っていくような大きさのものが来てしまって(笑)。メニューは十数種類も張り切って考えたんですけど、入りきらなかったんです。

メニューは、トリュフに見立てた雲子、飯蒸しをはさんだ〆鯖とボッタルガ、ズワイガニとブロッコリー、やわらかい豆乳のパンナコッタ いろとりどりのカリフラワーとうに、ごぼうを巻いた鶏のインボルティーニ トリュフ風味、サーモンマリネとオレンジ・ういきょう・イクラ、オマール海老とイチゴ・リコッタ・ピスタチオ・キャビア、鴨ロースと九条ねぎ・里芋 黄柚子、寒ブリといろんな大根・レッドキャビア、帆立貝と菜の花、フリッタータ、焼きリンゴとフォアグラ・五香粉、車エビのグアンチャーレ巻き

遠山 おー! クリスマスの心は?

笹島 昔だったら、女の子を口説くのに、クリスマスの食事に誘ったものですが、いまはカップルだけではなく、女の子だけ、男の子だけ、という仲間でもレストランでクリスマスを楽しむようになった。男の子だけというのは、ちょっとどうかと思いますけど(笑)。そういうのを見ると、こなれてきたなあ、と思うんです。だから、お弁当には、その季節にレストランで出すような料理を詰めました。ただ、冷めると香りがなくなってしまうので、トリュフなど香りの強いもの、食べると口の中で香りを感じやすいものを入れることを意識しました。

遠山 どれもおいしそうです。

笹島 黒いのは、「雲子」と呼ばれるたらの白子です。これは炭を付けて揚げてあって、形がトリュフみたいでお客さんにとても喜ばれる。それで、今年はこれを全店で、クリスマスプレゼントとして箱に入れて1品目に出したいと思っています。レストランではプレゼンテーションも大事ですから。僕はディズニーランドが大好きなんです。なぜディズニーランドが愛され続けるのかと言えば、みんな子どもに帰りたいから。ディズニーランドのような要素がレストランにも必要になってきていると思います。

遠山 私は、日本のクリスマスと言えば……ということで。

会場 わー!

笹島 まさにこういうことですよ、プレゼンテーション、レストランにおけるエンタテインメントとは。洒落がきいてますね。

遠山 我が家で子どものころによく食べていたから揚げです。お袋にレシピを書いてもらってつくりました。うちの親父が洒落ていて、家でよくたくさんの人を招いてパーティーをしたんです。そのとき並んでいたのが、このから揚げやフルーツポンチでした。当時はフライドチキンだと思ってましたが、から揚げで、完全に和食だったんですけど。

笹島 あはは。

遠山さんのお母様直筆のから揚げのレシピ

遠山 私は三菱商事からケンタッキーフライドチキンに出向しているときに、スープストックトーキョーの企画書を書いたんです。そのときのお店の仮の名がこの箱にある、「センタッキーブライトキッチン」。

笹島 あーそういうことですか(笑)。

遠山 フライドチキンはクリスマスがいちばんの売れ時なので当時、12月24日は、私は表参道のお店の外のワゴンで、これを売ってたんです。

会場 へえー!

遠山 だからとても思い出深いんです。私は今年、「100本のスプーン」というファミリーレストランも始めました。ファミリーレストランはファミリーで行くところのはずが、ただのちょっと安い店のようになっていて、それはちょっと違うと思ったからです。ファミレスは、子どもにとっての初めての外食、青年になって初めてのデートの場所になるかもしれないと思うと、力が抜けない。ファストフードから始まってファミレスもやっていますが、バーやレストランはやったことがないので、やってみたいと思っています。笹島さんは今後、どんなことをしたいですか?

笹島 お店を減らして、縮小していきたいです。いまは、ひとりの料理人が何軒もお店をやるっていうのはもう古いんですよ。あとは、イタリアにお店を出したくて、準備しています。日本に来たイタリア人に「おいしい」と言われてもお世辞かもしれないし、信用できないんですよ。だから実際に、ミラノの真ん中にお店を出そうと、去年から準備しています。イタリアは規制が厳しいんですが、2年後にミラノで万博が開かれるので、その規制が弱まっている。いましかないですね。自分がイタリアに行くことで、後続に道を開きたいと思っています。

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2013.12.21(土)