「Soup Stock Tokyo」を主宰する遠山正道氏が2012年に開催し、単行本にもなった大人気講座「おいしい教室」が、東京・丸の内を舞台に帰ってきました。今度はどんなお弁当が登場するのか!? 今年も毎回、多彩なゲストをお迎えして、テーマに沿ったお弁当を持ちよります。この連載では、講座で行われたゲストとの対談、そしてゲストや参加者が選んだステキなお弁当を紹介します。
第7回テーマ 「私をくらえ」なお弁当
ゲスト:安藤桃子(映画監督)
安藤桃子(あんどうももこ)
1982年東京生まれ。高校時代よりイギリスに留学、ロンドン大学芸術学部を次席で卒業。その後ニューヨーク大学で映画づくりを学び、監督助手として働く。2010年4月、監督・脚本を務めたデビュー作『カケラ』が、ロンドンのICA(インスティチュート・オブ・コンテンポラリー・アート)と東京で同時公開され、その他多数の海外映画祭に出品、国内外で高い評価を得る。2011年に幻冬舎から初の書き下ろし長編小説『0.5 ミリ』を刊行。現在、文庫版が幻冬舎から発売中。また、同作を自ら監督した映画『0.5 ミリ』が2014年全国公開予定。
遠山 安藤桃子さんのお父様は皆さんご存じの奥田瑛二さんですね。私、奥田瑛二さんて素敵でダンディって物静かなイメージだったんですが、実はとてもお茶目というか。
安藤 ダンディと言えば、まさに『男のダンディズム』っていう本を出していますけど(笑)。意外と素でコメディ映画もいけるタイプかも。
遠山 ところで、2011年、安藤さんが出された『0.5 ミリ』。これは、すごい本ですね……。壮絶というか、ドロドロというか……。
安藤 面白いのが、男性と女性で、全く、感想が違うんです。男の人は口を揃えて、「こわい」「グロテスク」「見たくないもの見せられた」と、女性は、「笑っちゃいました~! あははは~」と、真逆のコメントも多いんです。
遠山 私は、完全に男の反応ですね(笑)。真っ裸でさらけ出されている感じがしてね……。男は、「そこまで見たくない、美しいあなたでいて」みたいに思っちゃうのかな。
安藤 介護がテーマですが、介護小説ではないんです。主人公のヘルパーサワちゃんが、いろんな街で出会う老人を無理やり押しかけヘルパーをして、どんどん老人の生活と心に介入していく。表面的でなく、誰かの人生に関わっていくことで起こる摩擦を描きたかったんです。
遠山 摩擦とか、そんなに日常にはないですからねー、現代人は。
安藤 私は「摩擦を起こせー!!」と叫びたいくらいです。摩擦を避けて、いい湯加減のところで止まろうとする人が多いけれど、言ってみたら、セックスだって、キスだって、殴り合いだって摩擦。良い「摩擦」を起こすことで、その先が生まれる、と思っています。
遠山 そういえば、男ってセックスの話ってほとんどしないね。私のまわりだけかな。女の人は下ネタする人、多いですよね。
安藤 すいません、うちは親が昼間から下ネタ全開で、母に耳をふさがれながら育ってきたんで(笑)。女と男では下ネタの方向性が違うと思うんです。女性の場合は、生々しい。恋愛観を話しているうちに、かなりリアルな内情をさらけだしたり……気付くと、カフェでまっ昼間からセックス! って大声上げちゃったり(笑)。男性は、アンジェリーナ・ジョリーとチョメチョメしたいぜ! 位のかわいらしい下ネタが多いんじゃないかな。
遠山 しかし、みんな年とると総じて、エロジジイになっていくのかなー。
安藤 ファンタジーだけが、ふくらんでいくんだと思います。人生の長い歴史の中で強烈なものだけが残って、後のことは削ぎ落されて、子供に返っていくという……。
遠山 実際に介護のご経験があるんですよね。
安藤 おばあちゃんの介護を、在宅で8年くらいやっていました。それが、家庭崩壊しかねないくらい壮絶で、母がうつ病になったり……。日本では古来から、死に一番近い老人と生に一番近い子供が、神に最も近い存在として、大切に敬われて来ました。だからこそ、真ん中にいる私たちの世代もしっかりと生きられる。本当の意味で輪になっている社会だった。それが現代社会では崩壊しているんですよね。そこに怒りを感じたことが、小説を書いたきっかけです。
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2014.02.15(土)