安藤さんと遠山さんのお弁当を拝見

遠山 さて、今回のテーマ「私をくらえ」の意味ですが……。

安藤 そもそも、誰かがつくったものを食べるってどういうことだろうと思ったんですね。生まれた瞬間から死に向かう人の、人生の矛盾の中で、時間は命そのもの。その時間を費やしてお母さんがつくってくれた料理を食べるということは、お母さんの命を食べているのかも知れない。もっといえば、お米をつくったお百姓さんの時間=命も食べているし、その後ろにあるたくさんの人の命、そして素材そのものの有機物の命も食べている。当たり前ですが、私たちは日々命をいただいて生きている。

遠山 なるほど。この深い意味をきいた後で、私のお弁当、出しにくいのですが(笑)、「Carré de sushi unrouleau au concombre et caviar(胡瓜のカッパ巻かず キャビアを添えて 石畳風)」です。

安藤・会場 おおすごい! きれいー。

遠山 このテーマを聞いた時に、自分のコンプレックスを思ったんです。私は海外経験がなく、英語も英検20級とかいってるほど、西洋文明にコンプレックスがある。そこで、見た目はヨーロッパの宮殿のモザイクのようなんだけど、ものは何かというと、「胡瓜のカッパ巻かず」(笑)。胡瓜と海苔なんだけど、やっぱり西洋かぶれなんで、キャビアも盛って。西洋へのあこがれと日本の良さを合併して、自分のコンプレックスを食っちゃおうと。

安藤 キャビアをごはんにワーッとかけて食べたい、と一度は考えますよね! アルミの弁当箱も懐かしいですね。

遠山 今までわっぱが多かったんですが、あえて、角のある整然とした感じを出したかったんです。では、安藤さんは?

安藤 お弁当を、こんなにたくさんの初対面の人に見せるってまさに内臓見せるより恥ずかしいのですが……。タンタカ、タンタン、タンタン、タン……と脱いでいくような感じで(お弁当をほどいていく)。

遠山 おお~!

安藤 超シンプルに握り飯、なんですが、この中にストーリーがありまして。中央は中に梅紫蘇が、両脇には梅味噌が入っています。これは自分で3年前くらいに漬けた梅干しと自宅で穫れた紫蘇を合わせ、味噌は、友人が大豆から自然農法でつくったもの。ご飯は妹が四万十でもらったもので、塩は自然蒸発でつくった海の塩。そして、おばあちゃんがつくったぬかで漬けた胡瓜をおしょうゆで漬け直した漬物と、お母さんが25年前に漬けた梅干しを添えて……。「私をくらえ」のバックグラウンドには、めちゃくちゃ丁寧な時間がかかっているんです。しかも竹皮に包まれているから、食べたら、捨てられて、何も残らない。

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2014.02.15(土)