「Soup Stock Tokyo」を主宰する遠山正道氏が2012年に開催し、単行本にもなった大人気講座「おいしい教室」が、東京・丸の内を舞台に帰ってきました。今度はどんなお弁当が登場するのか!? 今年も毎回、多彩なゲストをお迎えして、テーマに沿ったお弁当を持ちよります。この連載では、講座で行われたゲストとの対談、そしてゲストや参加者が選んだステキなお弁当を紹介します。
第4回テーマ 「シェア」のお弁当
ゲスト:横川正紀(株式会社ディーン&デルーカ ジャパン代表取締役社長)
横川正紀(よこかわ まさき)
1972年、東京生まれ。京都精華大学美術学部建築学科卒業。その後、アメリカ発のインテリアショップ[Pier1]を経て、2000年に株式会社ジョージズファニチュアを設立。インテリアショップ「George's」を展開する。2001年、ライフエディトリアルストア「CIBONE」をオープン。2003年からは、ニューヨーク発の「DEAN & DELUCA」の日本での展開を手掛ける。2010年9月には株式会社ジョージズファニチュアから株式会社ウェルカムに社名を変更。2012年には、ライフスタイルショップ「TODAY'S SPECIAL」をオープンした。衣食住の垣根を越えた新たな試みを重ねて「味わいあるくらし」を提供している。
遠山:横川さんは、「ファミレス」といえばこの人、という方なんですが、みなさんはご存じでしょうか?
横川:意外と知られていないと思います。
遠山:お父様がファミリーレストラン「すかいらーく」の創業者のひとりなんですよね。
横川:そうなんです。父は4人兄弟の末子で、最初は乾物屋から始めて、その次にスーパーを。だけど、イトーヨーカドーやダイエーなどに勝てないと考え、新しいスタイルの外食で勝負しようと、1969年に東京の国立でハンバーグレストランを始めました。それがファミリーレストラン「すかいらーく」です。
遠山:お父様たちご兄弟は、それぞれ会社でどんな役割をされていたんですか?
横川:最初の頃はもちろん4人ですべてをやっていたようですが、次第に文学に造詣の深い長男が人事・教育、次男が社長として財務を含む経営全般、三男が仕入れ、商品開発、四男の父が業態開発やデザインにかかわっていたそうです。
遠山:当時からイケてるお店でしたね。
横川:父たちが、アメリカに憧れて、視察に行った際にロードサイドの大きなレストランを見て、日本にもモータリゼーションの波が来ると、こうなるはずだと目を付けたそうです。それで国立インターの近く、当時はなんにもない田畑の真ん中に突然、レストランをつくったんです。だから、最初は「バカじゃないか」と言われたようです。
遠山:木造キャンチレバーのレストランでした。
横川:そう、柱のない、屋根の突き出たような構造で、ミッドセンチュリーを感じさせるモダンな建築です。当時は銀座などからわざわざ国立まで、黒塗りの車が来ていたらしいですよ。
遠山:オシャレさんたちが集まってきたんですね。
横川:「ちょっと俺しか知らない店が郊外にあるんだけど、行ってみる?」という感じだったんでしょうね。
遠山:それでいきなり成功して。
横川:日本もどんどん車社会になって、読みが当たったんですね。僕が中学生のときには1000店舗になっていました。「イエスタディ」という店ができたのもそのころです。
遠山:目黒通りにありました。
横川:今はもうありませんが、当時は3時間、4時間待ちで、環八が大渋滞するくらいのお店でした。こちらはファミレスというより、カフェバーで、店内は暗めでデートスポットになっていたのを覚えています。
遠山:大箱で、アメリカ映画に出てくるようなお店でしたね。
横川:僕は中学生でお酒も飲めないのに、イエスタディのカウンターででっかいトロピカルカクテルのアルコール抜きを飲んでました。当時は毎週試食を兼ねて父とお店に行っていたので、生意気にもメニューやサービスアイデアを出したりもしてたんです。採用されたかは知らないですけどね。
遠山:へえ! でもなぜ、横川さんはすかいらーくグループに入らなかったんですか?
横川:創業のときにつくった社訓に「一族は会社に入れない」とあるんです。経営に家族を巻き込まないという方針で。
遠山:それもアメリカンなイメージなんでしょうか?
横川:そうかもしれません。それに、4兄弟ですから、それぞれ1人家族を入れても、4倍になってしまう。だから、最初から入れないということにしたんです。僕は、最初から入る気はありませんでしたが。
2013.11.15(金)
text:Rika kuwahara
photographs:MIki Fukano / Nanae Suzuki