「それぞれが考える正義や主義みたいなものを信じてみんな戦っている」
――光太郎と、信彦それぞれが「痛み」や「苦しみ」を抱えていますが、お二人はその「痛み」をどのようにとらえて、表現されたのでしょうか。
西島 今回のストーリーは現実にある問題を落とし込んでいて、それぞれが考える正義や主義みたいなものがあって、それを信じてみんな戦っているんですよね。
光太郎は目的のために手段は選ばない瞬間があって、「それは間違っている。だから戦わない」という選択をした男なんですけど、じゃあ「戦わないことは正しいのか」と。
もちろん問題があることは分かっているし、理想もあって何かを信じることもあるけど「戦うことは違うのでは?」という冷静な視点があって行動しない、という人の象徴なのかなと思いました。
光太郎は大義のためではなく、個人的なささやかな理由でもう一度戦いを始める男です。なので、大きな問題に対する悲しみというよりは、挫折を経験して「何をやっても結局世の中変わらない」という悲しみや、無力感みたいなものを抱えている人物だと思いました。
中村 信彦だけじゃなく、何か行動を起こし続けるエネルギーってバイタリティでもあるけど、客観的に見ると、向かっている先に光があるのか破滅があるのか、どこか危うさがありながらも突き進み続けているのは悲しいなと思いましたね。
本人はどう解釈しているか分からないし、もしかしたら気づいていないかもしれない。でも、全てが豊かで、安心と安全があったらそうはならないのかなって思うので。それがどういう行動原理や思想で、何を手に入れたいのかは、見ていただいた方それぞれに解釈していただけると思うんですけど、それ自体に切なさがあるなと思いました。
2022.11.27(日)
文=根津香菜子
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=亀田雅(西島秀俊)、Emiy(中村倫也)
スタイリスト=カワサキタカフミ(西島秀俊)、戸倉祥仁(中村倫也)