変身シーンにこめられた思いとは

――中村さんは西島さんが演じる光太郎の存在によって、信彦を演じるうえで感じるものはありましたか?

中村 信彦は信彦で、思想と行動が変わったとしても道を切り開いて前に進んでいくんですけど、ずっと光太郎のことを気にかけているんですよね。

 50年の間幽閉されて出た後、最初に会いに行ったのも光太郎で、その後も光太郎があまり行動を示さなかったり、煮え切らないように見えたりしても、やっぱりずっと大好きなんです。

 だから今西島さんが仰ってくださったようなことの視点を反転した場所から見ても、言葉は多くないですけど、光太郎の哀愁や歴史が見える佇まいで西島さんが「光太郎」としてそこにいるのをパッと見るだけでグラグラっとくるものがありました。だからこそ、信彦もあそこまで振り切っているところもあるので、そういう対比みたいなものがあったのかなと思います。

――私はまだお2人が変身するシーンを見ていないのですが……。

中村 今、変身しましょうか?

――ぜひ(笑)。お二人はどんな思いで変身シーンを演じられたのでしょうか?

西島 演技と感情が延長線上にあるように、感情のピーク時に変身するように脚本が書かれていたので、演技と変身ポーズが別ものになることはなかったですね。

 平成ライダーを見ていても、「自分がもしやるならこういう変身がしたい」と思っていたまさにそのままだったので、この作品の中で1番緊張もしたし、1番の山場だったなと思います。

中村 光太郎は5話、僕が演じる信彦は8話で変身シーンがあるので、ちょっとタイムラグがあるんですよね。僕は何か鋭利で「冷え切った熱さ」みたいな概念やイメージで、変身シーンを演じていました。

――本作の特報映像の中で少しだけお二人の変身シーンを見ることができたのですが、光太郎の「変身」には力強さを、信彦の「変身」にはどこか苦しげで、切なさを感じました。その解釈は間違っていますか?

中村 解釈に間違っているものなんてないんです。僕らがやるものを「こういう風に受け取りました」と言ってくださることが一番嬉しいので、そういう解釈を持たれたということが素敵だなと思います。

2022.11.27(日)
文=根津香菜子
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=亀田雅(西島秀俊)、Emiy(中村倫也)
スタイリスト=カワサキタカフミ(西島秀俊)、戸倉祥仁(中村倫也)