「決闘だな」「それほど凄まじいものだったのか」
――『Portrait』での撮影と同時進行だった「SWITCH」でのプールサイドでの撮影は、また本作とは雰囲気が異なりますね。おふたりのその場のセッションの中でシーンが生まれていったと伺いました。
操上 あのときは、綾野さんが突然プールに飛び込んだんですよね。僕が言ったのは「プールのそばに行ってください」だけ。その場で綾野さんが何をしたいかで、撮れるものが変わるというか。シャワーの写真も、プールに飛び込んで濡れたから……という自然の成り行きです。
綾野 この撮影の時には『Portrait』の撮影が始まっていましたから関係性もありましたが、ある種の「自由」を感じたことを覚えています。色々なものが削がれた「ただいるだけ」を同じ構図・同じカメラ・同じ照明に同じ空間、同じ人で行う日々の中で、「SWITCH」の撮影では、その拘束がありません。ですから生み出す自由があります。『Portrait』の撮影で僕たちは拘束することで、生み出すのではなく、そのままという漠然とした何かを感じていたということです。
『Portrait』の撮影は毎回1時間半から2時間くらい撮っていましたが、大体最初の5分で息切れします。服や髪形を変えたりロケーションが変わることもないので、僕自身が追い詰められていき、操上さんも撮る側として構図を変えられない中で追い詰められていく。
ただただ「観察する側」と「観察される側」の状態が続いていくなかで、操上さんが「決闘だな」とおっしゃったときに、「それほど凄まじいものだったのか」と胸が高鳴りました。
僕は写真家としての操上さんも大好きですが、操上和美さんという人間自体が大好きです。「何をしてもいい。何もしなくてもいい。」と思わせてくれる人。それが、『Portrait』のときは自分たちで負荷・制限をかけている状態だったので、「SWITCH」の方では「楽しいね」とはしゃいでしまって(笑)。
また『Portrait』の世界に戻らないといけないから、いまのうちにこっちで楽しんでおきましょう、という自然な成り行きでした。
2022.10.15(土)
文=SYO
撮影=山元茂樹
スタイリスト=申谷弘美〈綾野剛〉
ヘアメイク=石邑麻由〈綾野剛〉