「僕の観察力と、撮られる綾野さんがどのようにそこで“生きたか”」

――「決闘」という言葉がありましたが、『Portrait』に収録されている綾野さんが涙を流しているようなカットは、無言の決闘のなかで生まれてきたものなのでしょうか。

操上 撮っていたら、綾野さんが突然泣いたんです。こちらで「泣きだす」という感情に追い込んでいるわけではなかったのですが。撮る/撮られるのセッションをしているときに、綾野さんは心情の“旅”に出ているんだなと感じました。その“旅”でどこに行くかによって、ハッピーな顔になったり暗い顔になったり、突然涙を流したりする。僕たち(写真家)にとって、被写体の変化はやっぱりうれしいものです。それだけ被写体の心が豊かに動いているということですから。良い一枚ですよね。男に見せない涙というか。

綾野 本当に今回の撮影では、喋っている時間がなかったんです。撮影が終わった後に喋るという感じで、ずっと無言でした。ご飯を食べているときに「ご飯を食べる」に集中している感覚と一緒で、「写真を撮る/撮ってもらう」だけがある時間でした。

操上 普通の撮影だったら、いわゆる「指示」的なものはあります。でも今回は言葉で誘導するとかではない。綾野さんがある時間カメラの前に存在してくれれば、それで成立する。そこからは僕の観察力と、撮られる綾野さんがどのようにそこで“生きたか”というセッションですから。逆に、僕が綾野さんに「そこでちょっと暗い顔をしてください」なんて誘導するとどんどんダメになってしまう。

――最終的に、8カ月という長丁場の撮影期間(2021年5~12月)になりました。

綾野 自分が40歳になる手前の12月で終了することが決まっていたので自然とそうなったという感じです。それがなかったら、まだ撮っていたかもしれません。

 僕個人はこの『Portrait』が2023年の1月26日(綾野 剛の41歳の誕生日)に発売されるのはなんだか恥ずかしいのですが(苦笑)、幻冬舎の編集の皆さんが考えてくださったアイデアや、出版としての在り方――「30代最後を映したこの本が濃度を持ったまま出ていくには、このタイミングが最適だ」というイメージを聞いてなるほどと思い、このスケジュールになりました。

2022.10.15(土)
文=SYO
撮影=山元茂樹
スタイリスト=申谷弘美〈綾野剛〉
ヘアメイク=石邑麻由〈綾野剛〉