作品の中と外がいつの間にか反転……?

会場風景

 登場人物全員を森村が演じる「一人芝居」を、8つのシーンによって構成した連作の大型写真作品は、絵の中に描かれたドアを開けて絵の中に入ってくる者や、絵の中の鏡に映り込む外の世界の者など、作品の内と外がいつの間にか反転、自身が鑑賞者として外から作品を観ているのか、それとも作品の内側に閉じこめられて外を眺めているのか判然としなくなる。

森村が扮装のために用意した衣装の一部も、会場に展示されている

 さらに作品を納めた額のガラスに映る自分自身の影や、他の鑑賞者の姿に、新たな「別世界」のレイヤーを発見してしまったのかと、思わず背中に冷や汗を感じるのだ。「絵の魅力に捕らわれ、その中に閉じこめられてしまう」という恐るべき鑑賞体験が、観客自身も他人事ではなく感じられる展覧会。ぜひ足を運んで、「絵の向こう側」へ連れ去られる感覚を体験してほしい。

LAS MENINAS RENACEN DE NOCHE 森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る
URL group.shiseido.co.jp/gallery/exhibition/index.html
会場 資生堂ギャラリー
会期 2013年9月28日(土)~12月25日(水)
休館日 月曜日(月曜日が休日にあたる場合も休館)
入館料 無料
問い合わせ先 03-3572-3901

橋本麻里

橋本麻里 (はしもと まり)
日本美術を主な領域とするライター、エディター。明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。近著に幻冬舎新書『日本の国宝100』。共著に『恋する春画』(とんぼの本、新潮社)。

Column

橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」

古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。

2013.10.12(土)